最終章3  『真実の魔法と正義の魔法』

「くっくっく。たったの千隻ほどしか落とせませんませんでしたよ。いやいや、本当に腕がなまっていますね。お恥ずかしい限りですよ」


「おまえ……千隻って……おまえ、そんなに強かったのかよ?!」


「当たり前ですよ。私はソロモン72柱序列71位のダンダリオンです。……まあ、もっとも私は知能派なので、このように全面に出張って戦うような無粋な真似まねはあまり好まないのですがねぇ……くっくっく」


 ソロモン72柱序列71位のダンダリオンは、

 涼しそうな顔で、さも先ほどの魔法が当然の様に語る。


(……こんなやつの試練……もうぜってー受けたくないぜ……っ!)


 ギルドの前に居る、勇者や賢者はまるで夢を

 見ているかのような表情で口をあんぐりと開けて、

 目の前で何が起きているのか理解することすらできなかった。


 ――たった一撃の魔法で千隻……快挙ではある。


 だが、敵の戦艦は兆を超える。


 確かに一矢報いられたのかもしれないが、

 砂漠にコップの水をかけた程度の影響しか

 与えられていないというのもまた、事実である。


 その場に居た人間が、その事実に気づきそうに

 なる直前、二人のソレイユが口を開く。


「「それじゃ、次はボクたちの番にへっ!! ソロモン72柱序列71位のダンダリオン如きごとき、真実と正義のソレイユ・シスターズは負けないにへ!!」」


「ボクは真実の魔女――ソレイユ」


「そして、ボクはその姉――正義の魔女」


「「イニシエイト・ツイン・マジック」」


「「真実と正義の魔法其のその名は――ウォー・オブ・キッチンΣφαγή σε μαγειρικά σκεύη」」


 姉妹が両手を重ねる事によって、

 二人の間で真実と正義の、

 似ているが異なる魔法が円環。


 ――そして二人の体を駆ける魔力の奔流は加速していく!!


 正義だけでも、真実だけでも為しえないなしえない

 欠けた姉妹が、協力する事によって

 生み出される、新しい魔法体系の権限!


 ――それは、物理的な殺戮さつりくの魔法


 ソレイユ姉妹の上空に千をゆうに超える

 超特大の魔方陣が次々に展開されていく。


 ソロモン72柱序列71位のダンダリオンも

 知らない魔法のようで、彼女たちの発動する

 魔法を興味深そうに、眺めている。


 上空の魔方陣から、ずずず……っと刃渡り20メートルを

 超える長大かつ巨大なる包丁が排出されてゆき、

 この世界の物理的な刃物ととして顕現する。


 その全てが、神聖なる白金の光を纏っまとっている。

 これが――真実と正義の魔法


「「はああああっっ!!!! シューティンッッ!!!!!!」」


 白金の光を纏っまとった、長大なる

 千を超える包丁が、雲を貫き、天を貫き、


 それぞれがまるで意志を持っているかのように、

 空気の存在しない漆黒の空間を切り裂き進み、

 空中の戦艦を貫き、正確無比に、空飛ぶ棺桶かんおけ

 エンジンである、小さい太陽を破壊。


 ――まばゆい光を放ち爆発


 千を超える巨大な包丁は、一発も撃ち漏らす

 ことなく、船を貫き、爆発四散させていく。


 密集陣形を組んでいたため、一隻が破壊されると

 その船の爆破によって、周囲の船を巻き込んで

 連鎖的に破壊されて行く。


 ソレイユ姉妹の魔法による、異端審問官側の

 被害は――甚大。


 撃沈数は一万をゆうに超えていたのであった。

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