1-6

「ブラックドラゴン討伐おめでとう!乾杯!」


冒険者の酒場で一つのパーティーが祝杯を上げる。主役はブレイクである。後に龍殺しの二つ名を得るほどの活躍だったとだけ述べておこう。


「それにしてもあの『一騎当千』がパーティーを組むなんて思ってもいなかったけど何か理由があったの?」


パーティーの女が尋ねる。


「そんな大したことはない。上を目指すには一人では厳しかっただけさ。」


「そんなこと言って一人でもいけたんじゃねぇの? 実際ブラックドラゴンもブレイクのおかげで倒せたわけだし。」


本当のところはブレイク一人で倒せた。それほど常人離れした実力をブレイクは持っていた。


「―――誰かと共にこの喜びを味わいたかったんだ。」


ブレイクは一人ごちた。誰にも聴こえない小さな声であった。


ブレイクはその力を手にする前から今まで一人で戦ってきた。その孤独の中で密かに憧れていたのがパーティーだった。誰かと喜びを分かち合いたい。そう思っていたのだ。


「感謝しなければな。」


そう言ってブレイクは宴会を朝まで楽しむことになる。


所変わって図書館。職員達は締めの業務に入っていた。


「ブレイクさん、今日までだったんだけどな。」


司書は呟いた。そう、ブレイクの本の貸し出し期限はこの日までであったのだ。二週間で本の知識を実践に移してついでに龍殺しまでやってのけるブレイクには言葉もでないが司書には関係ない話である。


「返しに来たらしっかり言わなければ。」


司書は決意を新たにして業務を終えた。


ブレイクが本を返しに来たのは宴会の二日後。龍殺しも二日酔いには勝てなかったらしい。慌てて返しに来たブレイクに司書はきっちり延滞料金を請求してお灸も据えた。


ブレイクは自分に非があることをしっかり分かっていたのか何も言わずにお言葉を頂いていた。


ちなみにブレイクはその偉業のため新聞に載っていたので司書が『龍殺し殺し』と噂されるのは少しあとの話である。

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