感想書きたかったのでアカウント作ったついでに投稿した作品

乱読家

第1話

 目が覚めたら知らない場所に寝転んで居た。

 起伏の無いのっぺりとした質感の床、見回すと床も壁も天井も同じ材質のようで継ぎ目も見当たらない。 そして天井部分は全面が光を放っている。 出入り口は見当たらず、ここがどこかも分からない。 時間を確認しようと思って左手首にはめた時計を確認しようとしたら、服以外何も身に着けていなかったのでそれも叶わない。 ポケットの中には……上下とも何も無いな。

 そして目の前には成人男性程度の大きさの……前衛芸術なのかどう表現したら良いのか良くわからない変なオブジェ。 他に何も無いのでオブジェにどうしても意識が向いてしまう。


 ……あ、少し動いてる。 生き物? なんだこれ気持ち悪っ。 夢か?


 「勇者よ、ワレがお前を召喚した神である」


 突然なんか変な声が頭に響いた。 目の前のオブジェに口っぽい部分は無いが、なんとなくこいつがしゃべってる気がする。 まあ、周囲にそれしかなければそういった印象受けるよね、普通。


 「勇者よ、これよりお前はわが一族の裏切り者、魔神***を倒しに行くのだ」


 あ、間違いない。 確信した。 こいつがしゃべってるわ。

 話しの内容に関しては何言ってんだこいつ? と思ったが、ひとまず大人しく聞いておく。 しばらく聞いていて分かったことは……


 自称神が言うには


1.ここは俺の元々住んでいた世界ではない

2.ここから自力で元の世界に戻ることは不可能

3.神の同族で裏切り者の魔神***を殺せ(***の部分はノイズみたいな音になって聞き取れなかった)

4.殺せたら元の世界に返してやる


 ということらしい。 正直色々突っ込みたいところはあるが、重要なのは……


 「俺は一般人なので神を殺す力なんて持って無いぞ」 ということだ。


 そのままそう告げたらオブジェがゆらゆらとゆれて、揺れが治まった時俺の手の中に『何か』が出現した。

 何か……いや、ライフルだこれ。アサルトライフルって奴。でも、微妙におもちゃ臭い。

 肩にかけるスリングが付いていたのでまずそれを通して肩にかける。 見た感じブルパップ形式(銃床部分が機関部になっていて一寸扱いにくい銃)で銃把以外に銃身部分に下方向に突き出した握りが付いている。 スコープは無い。 全体のイメージとしては拳銃の後ろに弾倉付きのストックが生えて、前の方に握る部分が追加されたような形だ。 ……一体誰に説明してるんだ俺?


 うーん、セレクタ-スイッチ(連射とか単射とか撃たない)を切り替える部分はそれっぽく見えるだけで動かそうと思っても動かない。 銃本体にくっついてて単なる飾りになってる。 弾倉もイジェクトボタン自体がただの飾りになってて押しても外れない。 なにこれぇ……

 アサルトライフルかと思ったら、一体成型の銃っぽい格好に仕上がった何かだった。


 「これでどうしろと? 殴って倒すのか?」


 思ったままの疑問をぶつけて見た。

 すると、頭の中に操作方法のイメージが浮かんでくる。 気持ち悪っ、思考伝達って奴か? とりあえず、普通に引き金を引けば弾が撃てるらしい。 弾切れも無いので撃ち放題なようだ。


 さっそく試してみる事にした。


 腰だめに構えて引き金を引く、騒音とともに物凄い勢いで弾が連続で飛び出し目標に着弾、銃の先端から出る光をマズルフラッシュかと思ったら弾自体が光っているようだ。 パルスレーザーガンみたいなものなのか? そのくせ反動が凄くて銃口が跳ね上がり、着弾地点から上向きに切り取り線みたいに穴だらけになって行く。 これは、中々の威力だ。 馬鹿にしてすまんかった。 よし、こいつの事は今後、突撃銃(そのままやんけ)と呼ぼう。


 俺の目の前で地に伏した自称神は穴だらけだ。 だ、誰がこんなことを!? いや、俺だけどね。 誘拐した相手に自分(神)を殺せる武器を渡せばどうなるか理解できていなかった辺り全知全能では無いな。 撃たれてる途中何か叫んでいたが考慮する必要は感じなかったので無視して撃ち続けていたらボロクズのようになってこの有様だ。


 よく考えて欲しい。 俺が今置かれている状況だが、これは間違いなく誘拐だ。 そして、誘拐犯が俺に武器を渡してきて 「自分の代わりに気に食わない奴を殺して来い、殺してきたら家に帰してやる」 と言った。 そんなの言われるままに従ったとしても無事帰してもらえると信じる方がどうかしている。 最後は口封じに消されるのが落ちだろう。 手口としては中東やアフリカで良くある、攫って来た子供を洗脳教育して少年兵に仕立て上げ、使い捨ての道具のように利用するアレだね。 俺が大人であると言う部分以外違いがない。


 そもそも俺と誘拐犯の間には信用も信頼も成り立っていないし、成り立つはずも無いんだからそんな命令に従うはずも無いな。


 だから与えられた武器はその場で誘拐犯に対して使うのが正解。


 ついでに、この自称神が俺と同じような生き物である保証は無いので穴だらけに成って転がっているそいつをゲームで言う死体蹴りのようにひたすら撃ち続ける。 銃で一発撃てば死ぬなんてルールは無いし、何処までやれば本当の意味で死ぬのかもわからない正体不明のオブジェだからな。


 そもそも生き物なのかこれ?


 撃たれた穴から体液も出無いし、細かく砕けた破片はある程度のサイズ以下になると空気に溶けるように消えていく。 俺の知識にはこんな生き物は居ない。 まあ、とりあえず、全部消滅するまでは撃ちまくってやろう。


 どういう理屈なのか不明だが、この不思議な突撃銃は弾切れが無く、銃身が熱くなったりもしない。 一番不思議なのは撃った弾が自称神の体に当たると穴が開くのだが、その時何故か同時に着弾した弾が消滅している。 何でそんなことがわかるのかといえば外れた弾が床に跳弾して俺が死にそうに成ったから。


 連射するのをやめて丁寧に一発ずつゼロ距離で神の残骸を破壊していく。 なんというか梱包剤のぷちぷちを潰していく感じで黙々と撃ち続けてしまった。 肩が痛くなる代わりに銃の反動に慣れて来た頃、自称神は消滅した。 悪(誘拐犯)は滅びた。


 自称神が消滅した直後、のっぺりしていた空間が解(ほど)けるように消え普通の? 洞窟になった。 出口らしいところから光が見える。

 ……もしかしたら、こいつが消えれば元の世界に帰れるかも? といった期待が少しだけあったがそれはどうやら外れたようだ。


 しゃあない、洞窟を出てここが何処なのかを確認してみるかね。


 てっきり自称神を殺せば貰った突撃銃も消えるのかと思っていたが手元にはそのまま突撃銃が残っている。 これに関しては嬉しい誤算だ。 俺は突撃銃を担ぐと警戒しながら洞窟の出口へと向かった……

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