京男との甘い情事

紫遠〜しおん〜

第1話

京都のお茶屋さんの息子さんらしいボンボン(お坊っちゃん)。


そのせいか、彼は聞きなれない特有の京都弁を話す。


普通の京都弁とも違う、いわゆる京言葉と呼ばれるものらしい。


舞妓言葉の男はんバージョンや、と、彼は笑った。


話しかければ「へぇ。」


相づちは、「そうどすな。」


呼びかける時は「あんさん。◯◯はん。」


自分の事は「わて。」


感謝を伝えるのは「おおきに。」


謝る時は「すんまへん。堪忍な。」


そんな彼、秋芳(あきよし)さん。


私よりも一回りも年上なのに、私を子供扱いせずレディとして丁重に扱ってくれる。


そんなトコもやっぱり、お茶屋さんで育ったせいなのかな?


そしてベッドの上の彼は、とっても優しくて意地悪だ。


「愛柚(あゆ)はん、どないしはった? そないに隅っこにおらんとこっちに来い(きい)。」


私は、いつも秋芳さんとベッドにいると、自分の子供っぽい所作や身体付きが気になって、秋芳さんに素直にくっ付けなくて、広いベッドの端っこに小さくなってるのを、無理やり秋芳さんに引き寄せられる。


「なんや愛柚はんは、いっつもそうやな? なんで、そないしていつも隅っこに行かはるん? そないに、わてと同じベッドで寝るんは嫌どすか?」


「い、いえ、そんな…嫌だなんて…、そんな事ありません…。」


「そうどすか? それに、いつまで経っても、その敬語話すのんも直りまへんな?」


「あ…、だって秋芳さん、年上ですし…」


「わてと愛柚はんは、もう恋人同士やさかい、そない他人行儀な言葉遣いされるんは、なんや寂しおすな…」


「そんな…他人行儀だなんて…そんな事は…」


「そうどすか? ほなら、もっと側におっておくれやす。わては愛柚はんと、いつももっと近おに(ちこおに)おりたいんどす…」


そう言って秋芳さんは、私をギュッと抱き締めると狂おしい程の濃厚なキスで私を襲った。


「いつになったら愛柚はんは、わてに敬語を使わへんように、ならはるんやろうな。」


「もっともっと恋人らしゅうしたらええんやろか?」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る