リアリティーにこだわる
※最初に、念のため。
持論を展開している部分につきましては、一般論ではなくあくまで砂村の個人的な意見やスタンスです。
書くにも読むにも、リアリティーにこだわります。
生身の人間の言動を写しとるように書きたいし、それができている作家の小説が好き。
ここで言うリアリティーというのは、たとえばファンタジーなどの「現実にはありえない設定」を否定するものではありません。
たとえば登場人物たちを、現実の舞台設定なしにパラレルワールドのようなところに生かすにしても、あるいは異世界など非現実空間に飛ばすにしても、その世界の中で矛盾がなく、筋が通っていれば大丈夫。
動物が喋ろうが、天空や地底に文明があろうが、過去や未来にタイムスリップしようが、どんなぶっとんだ設定でも構わない。
逆に、たとえば舞台が身近な町で、主人公が親しみやすい一般人で、暦まで現在とリンクしていたとしても、この状況でなぜそんな言動に至るのか? とか、あれ? 初期設定からブレてきているのでは? などと感じてしまうと、読み続けるモチベーションが下がってしまう。
数多の酷評をされたことが記憶に新しいジブリ映画『ゲド戦記』。
もちろんお好きな方もいらっしゃると思いますし、自分もあの世界観や色遣いの美しさには惚れぼれしました。
しかし序盤で、野盗に襲われている主人公を助けた父親が、ほどなくして「ここからは、ひとりで大丈夫だよな」などと言ってなぜか先に立ち去る。
……なぜ!? 急ぎの用があるわけでもないし、危険な地域で襲われたばかりの息子をなぜ置いていく!? そもそも向かう方向一緒なのでは!?
と激しく困惑し、もやもやしすぎてそれ以降の内容をあまり楽しめませんでした。
恋愛もので言えば、好きになる心理に説得力がほしい。主人公は一体このひとのどこか好きなんだろう……? などと読者が疑問を抱く作品は、描きこみが足りない可能性が高い。
美女やイケメンであるというだけで恋が続く場合も現実にあります。それであれば、そのキャラが面食いという設定であれば筋が通りそう。
人間という生き物を動かす以上、どんな場所に置くにしても、多少なりとも必然性を感じる言動をとるように描くべき、というのがわたしの矜持です。
そんな自分なので、たとえば台詞なんかにもすごくこだわっています。
一度書いたあと、口の中でつぶやいてみて、いかにもな書き言葉になっていないか、自然に発音できるか、そのキャラらしい言葉づかいであるか、などを再考します。
「物語の中では物語調の台詞でよい。『ああ』『うん』といった相槌や言い間違いなど、現実に交わされる言葉をそのまま複写する必要はない、台詞の美しさを重視せよ」というプロの意見も、どこかで読んだことがあります。
でも、自然で何の違和感もなく、なおかつキャラに合った台詞を描く作家さんもたくさんいます。わたしもそれを目指したい。
なので、自作には現実のひとがよく使う「まあ」とか「えっと」等を読みづらくならない程度に多用しています。無駄のないすっきりした明朗な台詞を好む読者の方の好みには、合わないかも。
ぺらぺらと説明的な長台詞を喋ったり、どのキャラもみーんな同じ口調だったりするのもまた、読んでいて冷めてしまいます。
キャラの後ろに創作する作者の姿が透けて見えてしまうからでしょうか。
もちろんフィクションだとわかりきっているにしても、物語の中にどっぷりと入りこみたい気持ちがあり、それが阻害されるとどうにも残念なのです。
男性キャラがみんな「おい、〜〜してくれ」「なあ、〜〜だろ」といった粗野な口調だったり、女性の台詞にいわゆる「よ・わ・ね」言葉がもれなく付いていたりするのも、個人的には受け入れづらいです。集団の中にひとり、そんな口調のキャラを混ぜるくらいがちょうど良さそう。
現実世界では、部下に対して上司はきちんと敬語で話すことも多いし、老人だからって一人称「わし」じゃないし、在日外国人の方が日本人より流暢な日本語を喋ったりする。
作者が固定概念を取り払ってフラットな目で世の中を見ているかという点が、台詞ひとつに表れていたりします。
長くなってしまったので、次回に続きます……たぶん。
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