近未来ディストピアアイドルもの 設定

野良猫のらん

彼らは<<大人>>になるためにアイドルをする

 近未来。医療の発達により人類は死を克服し、子供を必要としない社会になっていた。


 『手術』により細胞の老化を止めることによって、人間は不老不死になった。

 それにより人口が減らなくなり、法律によって子供を産むことは禁じられた。

 それでも法を犯して子供を産んでしまう人間は時々いる。

 子供が生まれなくなって、乳製品も子供服も玩具も何もかも店には並んでない中で子供を秘密裏に育てることは難しい。

 大抵は子供の存在が発覚し、違法に生まれた子供は警察に保護され『学園』に送られるのだ。


 違法に生まれた子供は『学園』の中でだけ存在を許される。

 『学園』に送られた子供はその中で――――アイドルになる訓練を受ける。

 イレギュラーに存在することになった子供の役割は、大人を慰めることだけなのだ。

 少女の歌う淡い初恋の歌、少年の歌う大人への反抗を示すロックミュージック。

 それらすべては大人たちのノスタルジーを誘った。


 ・ちなみに少年と少女は別々の『学園』で隔離して育てられる。

 ・アイドルの歌やダンスにジャンルの制限はない。オペラ曲や讃美歌を歌う子やヒップホップをやる子もいる。


 『学園』は各地に存在する。

 そして全国に存在する『学園』から一年に一度子供たちが集められアイドルコンテストを行う。(世界大会は四年に一度)

 コンテストで優勝したアイドルグループには『不老不死化手術』を受けて大人たちの仲間入りをする権利が与えられるのだ。

 「大人になったらこんなことがしたい、あんなことがしたい」そんな夢を抱いて少年少女たちはアイドルとして切磋琢磨する。


 <<子供>>とはもはや『手術』を受けていない人間を示す言葉であり、『手術』を受けた人間を<<大人>>と言う。

 もちろんコンテストで優勝を逃し続け、<<子供>>のまま老いさらばえていく者もいる。

 もうコンテストでの優勝はできない、優勝したとしてもこんな年では意味がないと諦めた<<子供>>はアイドルをプロデュースし養成する側に回る。

 <<大人>>になったものの生き方が分からない元<<子供>>がプロデューサーや『学園』の教師になることもある。


 実のところ、<<子供>>が存在を許されている一番の理由は事故や殺人などでイレギュラーに減ってしまった<<大人>>の補充要員だ。

 実際、飛行機の墜落などで大勢の<<大人>>が減ってしまった場合にはコンテストの『不老不死化手術』の枠が増えることもある。

 人口の安定。ただそれだけの為にシステマチックに存在を禁止され、そして許可されているのがこの世界の<<子供>>なのだ。



 ある意味では…………これはアイドル同士の、子供同士の殺し合いだ。



 ――――――――とある<<子供>>の手記より

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