先輩と後輩ちゃん

Yami1341

夏の日の思い出

 今は夏真っただ中、そして今日は夏祭りの日だ。

 そして俺は今、その祭りに来ている。もちろん1人でじゃない、ちゃんと待ち合わせしている......はずなんだがなぁ


「俺、なんかしたっけなぁ」

 かれこれ待ち合わせから30分は過ぎていてる。なのにもかかわらず彼女は未だに待ち合わせの場所に来ていない。連絡をとって確認しようとしても


「なんでこんな日に限ってスマホ家に忘れるんだよ......待つことしか出来ねぇじゃねぇか」


 そう、スマホを持ってきていないのだ。いまや誰しもが常に持っているであろうあの!ということで、ひたすら待つしかないのだ。来ていないことに不安を覚えながらずっと待ち続けることさらに15分、祭りも1番の盛り上がりを見せる時間帯になってきた。しかし、まだ彼女は来ていない。

「やっぱり無理だったのかな......」


 1人で花火でも見ようと動こうとした時、面を被った少女(女物の浴衣から判断した)が歩いてきていた。あの子可愛いな、でも一人で来てるのかな?だなんてと思っていると自分の目の前で立ち止まった。へっ?自分に用があるようにしか思えなかった。しかし、身に覚えがなかったために、

「どなたでしょうか」

と思わず質問してしまった。


 だってそうだろう?今更彼女が来るとは考えられなかったし......そもそも誘った時にも顔を俯かせて少し時間がたった後に返事されたんだ。なにか用事があったんだろう、まぁその結論には待っている間にようやくたどり着いたんだが......それでも待ち合わせの場所にずっといたことはほっといて欲しい。

 まぁそんな理由で俺は見知らぬ誰かが来たとしか思えなかった。


「すみません先輩、私です」

 そう言って彼女、後輩ちゃんは付けていた面を頭の上にずらした。そんな後輩ちゃんを見て、思わず見惚れてしまった。だって仕方がないだろう、普段から意識しているあの後輩ちゃんが薄化粧をして、なおかつ!浴衣を着て目の前にいるのだ。失礼、取り乱した。

 それに今日は無理だったんだ......と諦めかけていたから、その分の喜びもあり、ずっと見つめてしまっていた。


「ちょっと先輩、さすがに無言でずっと見つめられると......確かに待ち合わせの時間からかなり時間経っててごめんなさいですけど......あの〜、怒ってます?」


 ようやく立て直して

「ほんとに、いやほんとにだよ?どれだけ待たされたと思ってんのさ、まぁ怒ってはないけどね、ちゃんと反省はしてよ?」

といつもの調子で返せた。


「女の子はいろいろ準備があるからいいんですって、だから先輩も私を許してください。ねっ?」

「いや、ねっ?じゃないからそこは素直に謝れよ」

「いいから先輩、早く祭り行きましょっ、もう時間もないですし」

「まったく、誰のせいで時間が無くなったんだか」

「そんなにうじうじ言ってないで少しはリードしてくださいよ、先輩でしょ?」

「まったく......ほら行くぞっ」

手を乱暴に取って祭り会場に入っていく


「ちょっ、先輩な、なんで手を?」

 慌てたように聞いてきた。少し頬が紅く染まっている気もしなくはない。でもそんなことを気にしている余裕はない。

「はぐれたら大変だろ?ただでさえ時間がないんだから、それにリードしろって言ったのは後輩ちゃんの方だよ?」

 そう言い、自分の顔を見られないように、足早で会場を歩いていく。多分今の自分の顔は真っ赤なんだろう。


 そうして2人は祭りの雑踏の中に消えていった......






   待ち合わせ時間頃の後輩ちゃん


「それにしてもどうしたの?いきなり『浴衣貸してっ、あ、あと髪のセットも!』だなんてあわてた様子で言い出して、あっ、もしかしてお姉ちゃんよりも先に男が出来たっていうの?ずるいよ!!」

「なっ、そんなんじゃないし、ただの先輩だし......今は(ボソッ」

「え~こんな気合い入れた恰好していくんじゃただの先輩じゃないでしょ。今度私に紹介しなさいよ。それよりもいいの?時間、結構経ってると思うけど」

「えっ、ちょっと待って、もうこんな時間!?ありがとっお姉ちゃん」

そう言って慌ただしく家を出て行った。

「可愛いから自信もって......って、もう聞こえてないか。はぁ、自分にもいい人いないかなぁ」



「えっ、どうしよぉ......先輩と連絡とれないし、もう帰っちゃったかなぁ......」

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先輩と後輩ちゃん Yami1341 @RenYamiyoTuki

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