第24話 パートナーチェンジ

朝。アウラの隣で目覚め、2人でコーヒーを飲んで一緒に食堂へ行く。強化スープは合成胡椒か合成カレーパウダー、合成トマトケチャップなどで毎日違う味付けがしてある。

朝食のあとは午前中の作業をして、それからアウラの隣に座って所長の話を聞きながら昼食の合成パンを食べる。

午後は作業をしたりコーラを飲んだり、畑を見に行ったりして過ぎる。夕食にヤコブが出してくれる野菜料理はどれも珍しくて美味しい。

夜コテージに戻ってまたコーヒーを飲み、ちょっと教養番組を見たりして、任務を遂行してアウラの隣で眠る。

事件といえば、所長のコテージが雨漏りして家具修理のメンバーが総出で修理したりとか、飼育されている豚が1匹脱走しそうになったとか、そんな話だ。

故郷の惑星から遠く離れて青い風が吹く惑星にいるというのに、宇宙人が攻めてくるとか酸素や食料が無くなりそうになってなってパニックになるとかいう事件が起こるわけでもない。

実際にそんなのが起きたら大変だけど。


平和な日常。こういうのを幸せというのだろうか。僕はこんな日がずっと続くような錯覚をしていたんだ。


ある日、僕が乾燥地帯の土と低湿地帯の土に撒いた大豆が芽を出した。

ケイトに報告に行こうとケイトのコテージに向かっていると泣きそうな顔をしたフランに出会った。

「ジェイミィ、1ヶ月たったらパートナーチェンジがあるって知ってた?」と聞かれ、僕は一瞬びっくりしたけど、なるほどねー、そういうことがあるかも知れない、そう言うとフランに睨みつけられた。

「ジェイミィはアウラのことが好きじゃないの!?」そう言うとフランの華奢な背中は行ってしまった。

え?

この理論の飛躍は何なの?そりゃ好きか嫌いかと聞かれたらアウラのことは好きだけど。


その夜僕はアウラにパートナーチェンジの話をした。

「私もそのうわさは聞いたわ」全く、女の子の間の情報伝達速度は光の速さより速い。


B計画の参加者120人は男女各12人合計24人づつが5つの惑星に割り当てられているのよ。1ヶ月でチェンジして12人に総当りにするのが一番効率のいいやり方じゃないかしら。


フランみたいに感情的になられるのもゴメンだけど、アウラの理論的な意見はちょっと淋しかった。

でもまだウワサなんだよね?

本当なら所長がそう言うでしょ。


パートナーチェンジが本当なら、それはもうすでに決まっていることで、僕たちはそれに意見を言える立場ではないけれど。

そういうことをするのなら事前に教えておいて欲しいと思う。この惑星に来た最初の夜のことを思い出す。

あの時、1人残ってしまっていたアウラ。その時は見た目が地味だからだと思っていた。実際は話をすると面白いし、整った顔立ちをしていると思う。

ただ、今みたいに何を考えているのかよくわからないところはある。

パートナーチェンジがあると聞いて、「それは残念」か「それは楽しみ」のどちらかを言ってくれればいいのに。まあ後者だったら僕は落ち込むけど。


そんなことがありながらも日常は続いていく。


週に1回、1羽ごとに鶏の体重を測ることにしたというアウラに、え、どうやって見分けるの?と聞くと足に金属の輪が付いていて個体の識別が出きるようになっているのと答える。

でももうそれが無くても見分けられるわ。それはすごいね。僕はようやく他のメンバーの名前と誰と誰がペアなのかを覚えたばかりなんだけど。


そしてその日は僕が思っていたよりも早くに来た。

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