第3話 異世界 第1住人発見

「さてと、声のした方向はこっちであっているよな?」

 そういって辺りを見渡してみるとイケメンの男達が1人の少女を捕まえ、少女の服をナイフで切り裂こうとしている……。

「彼女嫌がってるじゃん……。そういうことはお互いの同意のもと行うことじゃないかな?」

 そういって茂みから顔を出し、女の子を取り囲む男達に話しかけると男達は俺の方を振り向き殺気の込もった目で俺のことを見つめてくる。

「なんだ急に? お前には関係ないだろ? このブスは俺達の性欲の捌け口になるんだよ。お前みたいなイケメンは美女を選びたい放題かもしれないが俺達みたいなクズはこの女みたいなブスとヤルしか出来ねぇんだよ! 邪魔するって言うなら容赦しねぇぞ」

 リーダー格の男がそういうと女性のことを押さえつけていた手下の男達がシミターを構えて俺と女性の間に立ち塞がる。

「そういうわけにもいかないじゃん……。話し合いで済ましてくれると嬉しいんだけど?」

 そういって男達に微笑みかけるが彼等はニコリともせずシミターを振り下ろしてくる。

「交渉は決裂だ、兄ちゃん」

 男達はシミターを振り回し、俺を殺そうとしてくる。

「だからって、いきなり刃物を振り回すとか単細胞すぎるでしょ……。どうしよう?」

 鞘から刀を抜き、振り下ろされるシミターを受け流す。


「もういいです! 私のことは放っておいてください! 私のせいで見ず知らずのあなたが怪我をするなんて耐えられません」

 リーダー格の男に捕まっている女性が涙目で叫んでいる。

「いいわけあるか! ならどうして君は泣いているんだよ! 確かに今さっき会っただけの関係だけど、泣いている君を放っておけるわけないじゃん! 俺は君を助けるよ」

 シミターを受け流しながら反撃を試みる。

「女の声が聞こえなかったのか? もういいって言ってただろ? 騎士(ナイト)気取りか?」

 手下の男達の振り下ろす一撃一撃が重く、受け流すのも限界に近づいてきている。

「いくら異世界だからって人を殺すのは抵抗があるけど、お前達みたいなクズ野郎どもは刀の錆になるくらいが世間のためなのかもしれないな……。斬る」

 その言葉と同時に男の右腕を峰打ちする。

「俺は人を簡単に殺せるような人間じゃないからな、殺したいのはやまやまだが捕まってもらうよ。自警団とかあるでしょ?」

 手を打たれシミターを落した手下の男達に刀の切っ先を向けると敵わないと判断したのか手下の男達は両手を頭の後ろで組み、降伏した。

「手下の彼らは降参したけど、まだ続けるの?」

 女性を人質にしている男に尋ねると、男は胸元から銀色に光るプレートを取り出して自慢げに見せて『俺はCランクの冒険者だ、お前みたいな一般人が敵うはずが無いだろ、調子に乗るな』と言って女性の首元にナイフを近づける。

「分かったから、これ以上罪を増やすのは止めようよ。そっちにはもう勝ち目はないよ……」

 俺は宥めるように優しい声音で男に話しかけるが男は手のひらを俺に向け、何かを唱えると男の手のひらから火の玉が発射される。

「うわっ、危なっ! 燃えるじゃんか! つーか、やっぱりファンタジーの世界なんだな……。今更だけどスゴイな……」

 迫ってくる火の玉を避けながら相手の隙を窺っていると男の背後から、さっきの犬達が現れ、俺のことを見つめてくる。

「ワゥゥゥーン」

 犬達は遠吠えをすると同時に男の隙を突いて女性の首元から離れたナイフ目掛けて跳びかかり男を押し倒す。どうやらさっきの犬達は俺のあとをつけて来ていたらしい……。

「ありがとう、さすがに魔法を使われていたから俺一人だと難しかった」

 犬達にお礼を言い、押し倒され唸っている男を刀の鞘で叩き、気絶させた後、木に巻きついていたツタで手下の二人と一緒にぐるぐる巻きにして拘束しておく。

「ケガは無い? 大丈夫?」

 人質にされていた女性に声を掛けると彼女は顔を真っ赤にして頷き、俺のことを見つめてくる。

「そっか、大丈夫そうなら良かった♪ それよりも捕まえたコイツらを警備隊とかに引き渡したいんだけど、どうすればいいのかな?」

 俺の前に座りこんでいる女性に声を掛けると俺を見ないように顔を逸らしながら右手で森の方を指差す。

「あっちに町もしくは村みたいなところがあるのかな? 教えてくれてありがとう♪ 君は一人で大丈夫? もし良ければ一緒に行く?」

 そう尋ねると彼女は慌てた様子で首を横に振り、急に立ち上がると教えてもらった方向とは別の方向に駆け出していってしまった。

「う~ん、心配だな……。でも犯罪者をこのまま放置するわけにもいかないし……」

 そういって考えていると白い犬がやって来て、服の裾を引っ張ってくる。

「なんだ? どうかしたのか?」

 そう言いながら白い犬の頭を撫でると黒い犬が隣にやって来て、女性が走っていった方向を見つめたあと、俺にお辞儀して黒い子犬を2匹連れて、女性を追うように駆けていってしまった。

「えーっと……。女性のことはアイツらに任せて、俺達はあの子が指差した方向にむかえってことなのかな?」

 白い犬を見つめると白い犬は頷いて女性が指差した方向へ歩いて行ってしまう……。

「ちょっ、待ってってばっ!」

 俺は白い犬と白い子犬を追って森の中にむかうことにした。


「どうして人間がここに居るんですか! もしかしてあのハーフが私達を売ったのか!」

 そう言って鎧騎士は槍を構えて俺を見つめてくる……。

「えーっと、どうして槍を突きつけられてるのか分からないけど、森の中に女性を襲っていた男達を捕まえたから任せたいのだけど……」

 槍を構えた鎧騎士にそう伝えると彼? は俺を一瞥したあと町の中に入っていってしまう……。

「それじゃあ伝えたし、俺達はお前の相方とさっきの女性を追っかけるか」

 そういって白い犬の頭を撫でると嬉しそうに尻尾を振って『わんっ♪』と吠えると匂いを辿るように森の中に戻っていく。

 森の中で何度か魔物? のような生き物に遭遇したが白い犬達が吠えると怯えた様子で立ち去っていった……。いったいこの白い犬達はどれだけ強いんだ……。


 黒い犬達も優秀なのか通っていったと思われる道には魔物と思われる生き物の死骸がいくつも転がっている。

「お前達どんだけスゴいんだよ……。この様子だと、あの女性は大丈夫そうだな」

 そういって白い犬を見ると嬉しそうにドヤ顔をしている様に見えた。

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