第49話『止まらない震え』

「しかし、本当に恐ろしい菌だよな、聖が作ったものなんだろ? 何年もかけたって言ってたけど町の人がいなくなるって……」


と長谷川はあたりを見回しながら使えるものを探していた。

猛は最初はあまり気にしていなかったが

町に誰もいないということを少し気味悪き感じ始めた。


(いや! 自分でやったんだろ! 生き残るために! いったい何を考えてるんだ!)


猛は思考を正常にしようとした。

すると

グチョリ


「……」


足元には何か溶けたようなものが残っていた。

そしてそこには服も合った。


「!! うう!」


猛は気分が悪くなり口を押えた。

それを見て長谷川は


「おい大丈夫か? 体調でも崩したか? 少し休憩するか?」


と近寄った。

猛は


「だっ大丈夫、少し餌付いただけだから、気にしないでください」

「?? そう? ならいいけど」


と長谷川はまたすすみ始めた。


(そうだ、何をしてるんだ、俺は考えるなよ今更! こんなことを考えて何になるんだ! とにかく落ち着け! 落ち着くんだ!)


そしてまた先を進み始めた。

そして


「ここって」

「ああ、俺たちが戦った場所だよ、一応ここに武器とか落ちてると思うから拾っておこう」


そう言って長谷川は散らばっている剣やら弓を回収した。


「ほほう、防具もあるのか」


ジュルウ


「うわ!! なんだ溶けた人間の液か、気持ち悪」


そう言って鎧を振って液体を落した。


「!! うううう!!」


猛はそれを見て言え気が込み上げた。


「おえええええええええええええええええええええええええええええええ!!」


そして、あたりに吐いてしまった。


「おい! やっぱり無理するなよ! 休憩しろ!」

「うん……ごめん……そうするよ」


そう言って壁のあるところで背もたれにして休憩した。

すると

キン


音のする方を見ると先ほどの戦いで溶かした槍がった。

すると


『死ね! てめえは死ねええええええええええええええええええええええええええええ!!』

「!!」


猛は先ほどのリンとよばれた声が頭に響いた。

溶けた首が少しずつ回復している時に聞こえたなぜかずっと頭に響く声

そして、その声を出させたのは間違いなく自分の聖であるという事実

そこにある液体になってしまった人間は間違いなく自分たちが生き残りたいという理由で殺していった町の人たちであると

そのことが猛の脳裏に見ていた人の顔を浮かばせた。

そしてそれは突然目の前で消える幻覚を


「うううう!!」


猛は吐きそうになりながらも建物の中に入った。


「はあはあはあ」


少し落ち着けるために深呼吸した。

そのおかげで少し落ち着いた。


「良かった、少し落ち着いた気がする」


そう言って壁を背でもたれ足を少し前に置いた。


グウ


猛は何か柔らかいものを踏んだ。

それに目をやると

人の服だった。

そして、その服は一度見たことがあった。


「これって、どこで見たんだ? 全然覚えて……」


そしてふと思い出した。

それは猛が助けようとした女の子の服だった。

そしてその隣にはもう1人いた女の子の服がった。

いずれも液体で濡れていた。

そこで猛は悟った。


(俺は初めて会った女の子をも殺したんだ)


そして頭の中に恐怖の文字が浮かび上がる

体が震えはじめる

思うように体が動かなかった。

そして


バタン


その場で倒れてしまった。


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「ふう、一通り大丈夫かな? この袋便利だな、あいつの開発したこの袋がなければこれ全部は入らんぞ」


それは聖が2人に渡したどんなものもどれだけでも入る袋と言う便利グッズだった。

しかも何を出すかは口で言えばすぐに手に取れるということらしい


「どこまで本当家は分からんが役に立ったな、なあ! 猛!」


そう言って猛が休んでいた場所に目をやるとそこには猛はいなかった。


「? 猛? どこ行った?」


そう言ってあたりに目をやると猛が休んでいた近くの扉があいていた。


「? 中で休んでるのか?」


そう思って長谷川は中に入ると

猛が倒れていた。


「!! 猛! 大丈夫か!」

「……あ……ああ」


猛の目は虚ろとしていた。

長谷川は


「おぶってやるから、聖に見てもらおう!」


そう言って猛をおぶって運んだ。


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「で、さっきからこんな調子だと?」

「ああ、なんか変なんだ」


そして聖は猛を見ていた。

そして


「ああ、なんか気づいたんだろ、自分が生き残るためとはいえ人を殺したってことに」

「? ああ、まあそう考えるとそうだし、そうなるわな」


猛は体を震わせながら冷や汗をかいていた。


「まあ、そうだな、えっと、童貞を卒業した気分はどうだ!」

「何、そのアニメやら漫画で言いそうなギャングみたいな言葉……」


と聖の言葉に長谷川はツッコんだ。


「それフォローにならんだろ? もうちょっと気の利いた言葉を言えんのか? お前それでもみんなに愛された生徒会長?」

「まあ、大丈夫、さっきのはほんの冗談だから、でもまあ、そうだなこいつも子どもだしな……アム○みたいに初めて殺していることを自覚してふさぎ込む状態って本当にあるんだな……」

「まああるだろそりゃ」


と長谷川は言った。

それを見て聖は


「お前は大丈夫なの? 私はここに来てから結構慣れたけど」


と言うと


「まあ、子どもが死んでる姿を見て心の何かがスッキリする気分はあったかな? 俺って狂ってるのかな?」


と聞くと


「まあ、お前は生前子供に焼き殺されたせいで恨みがあるからじゃね? 狂ってるっていえばそうだけど」


と言った。

とにもかくにも猛の精神を戻すことにした。

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