第2話
しかしけっこうな田舎で、北に大きな山が控えるこの地も、カブトムシは掃いて捨てるほどいるが、クワガタは滅多に見かけることがなかった。
父が子供の頃には、カブトムシに比べると少なくはあったが、特に珍しいものではなかったと言う。
――とにかく見つけるしかないか。
まさとは明日早速山に入ることにした。
「ごちそうさま」
朝食をすませると、まさとはそのまま山に入った。
山には地元民から遊歩道と呼ばれている遊歩道もどきの道がある。
元々は山頂近くにある神社へ至る道だったのだが、その神社はここ十数年、完全に放置されていると言う。
しかし狩猟や山菜採りに山に入る人が山で迷わないために今でも使われており、道が草まみれになったりはしていない。
基本的には遊歩道を歩き、そこからそれて山に入ったとしても、遊歩道から大きく外れなければ再び遊歩道に戻ってくることが出来て、山に迷うことがないというわけだ。
まさとも同じ方法を使って、クワガタを探した。
少し遊歩道を歩き、そして山に入り、戻って再び遊歩道を歩く。
これを繰り返すのだ。
戻るときは遊歩道を逆に歩けばいい。
そしてそれを何十回となく繰り返したのだが、クワガタは一匹もその姿を現さなかった。
気付けばもう日がすっかり高くなっていた。
――ここまできて、やめるもんか。
まさとはむきになって、奥へ奥へと進んで行った。
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