第16話 第3魔法少女、結

 ここは魔法都市渋谷の高級住宅街の神山町の豪邸。

「おみっちゃん、モーニングティーを入れてちょうだい。」

 しかし返事は返ってこない。

「おみっちゃん! おみっちゃん!」

 しかし返事はなかった。

「全くどこに行ったのよ? おみっちゃんは?」

 まだ結は気づいていなかった。

「あ、そっか。おみっちゃんは魔法少女になったから、自由に徘徊できるのね。」

 幽霊のおみっちゃんは、結に第12魔法少女にされた。幽霊初の魔法少女である。

「コンコンも連れて行っちゃったのね。」

 おみっちゃんのペットのコンコンもいなくなっていた。

「魔法少女になったからって、私の使い魔兼家族をやめちゃうなんて、なんて薄情な幽霊なの!?」

 使い魔兼家族にもいろいろいるようだ。

「寂しい。」

 結は大豪邸に一人きりになってしまった。

「いいわよ。お茶くらい自分で入れれるもの。」

 結はキッチンに移動して、お茶を入れようとする。

「ぎゃあ!? なにこの汚いキッチンは!?」

 食器やティーカップなどの洗い物はほったらかしで、臭い臭いや黒い奴もゴキゴキしていた。

「おみっちゃんめ!? ちゃんと片付けてから出て行かなかったな!? クソッ!? なんで私がやらないといけないのよ!? おみっちゃんがいなくても生きていけることを証明してやる!」

 結は渋々、台所の掃除や食器を洗い出す。

「あああああー!? お皿はどこにしまえばいいのよ!? 在庫は緑茶ばかりじゃないの!?」

 全て、おみっちゃんに任せきりだった結は家事が大変過ぎて発狂した。

「おみっちゃんって、毎日大変だったのね。」

 自分で家事をやってみて、初めて他人の大変さが分かるものである。

「やかんはどこ? 魔法ティファールのポットはどこにあるのよ?」

 普段から家事をしていないので、結はどこに何があるのか分からない子になってしまっていた。

「あ! そういえば私は魔法少女だった。全て魔法でやってしまえば良かったんだわ。」

 結は良い事に気がついた。

「台所よ! きれいになれ! 朝のお紅茶はダージリンをよろしく! ティファ・ティファ・ティファニー!」

 なんということでしょう。あれだけ結が苦労した火事とお茶が一瞬でできてしまった。これでいいのだろうか?

「いいのよ。私がいいって言ってるんだから。」

 お金持ちらしい、傲慢な決めゼリフ。

「魔法があれば、何でもできる! よし! 私を見捨てて出て行った、おみっちゃんなんか放っておいて! 新しい妖怪のメイドさんを召喚するぞ!」

 結は、妖怪を司る魔法少女であった。

「いでよ! 新しい妖怪のメイドさん! ティファ・ティファ・ティファニー!」

 おみっちゃんに変わる新しい妖怪のメイドさんを魔法で呼び出す。

「ピーン・ポーン。郵便です。ハンコお願いします。」

 その時、郵便配達のおじさんがやってきた。

「ちょっと待って下さい。ハンコを探さなくっちゃ。」

 結はハンコを探し始める。

「どこ? どこ? どこ? ハンコはどこにあるのよ?」

 玄関、居間、書斎、台所、トイレにお風呂、どこを探してもハンコは見つからない。

「ハンコは隠し金庫の中ですよ。」

「あ、そうなの。って、私、金庫のダイヤル番号を知らないわ!?」

「私、金庫開けなくても壁をすり抜けてハンコが取れますから。エヘッ。」

「お、おみっちゃん!?」

 ハンコが見つからなくてピンチの結の前に現れたのは、家出幽霊のおみっちゃんだった。

「コン。」

 ペットの小妖狐のコンコンも一緒である。

「どこに行っていたのよ!?」

「え? スーパーに買い出しに行ってただけですよ。」

「そ、そうなの。無事で良かったわ。オホホホホッ。」

 ホッとした結は笑って誤魔化すのであった。

「あのハンコは、まだですか?」

 玄関に立たされている郵便配達員の渋井谷男であった。

「ここはどこ? 私に何が起こったの!?」

 結は新しいメイドの妖怪を呼び出してしまった。

 つづく。

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