第6話 雨後

「 雨後 」


雨が降ったようです

水面がいつのまにか幾つも幾つも生まれているなんて

月が映っているようで新鮮でした


草の穂先が脛に触れて冷たいです


 目が覚めたことは良かったこと?


勢いよくはじけた水滴に

脱皮したてのコオロギたちが

無数に跳ねた気がしましたが

夢だったかもしれません


 驚いているべきだったかしら?


貴方がたは

まだ少しの音色も出せないけれど

濡れた翅が乾いて固くなれば

思い切り翅を震わせることができるのです

震えることができるのです


 喋りすぎましたか?


いちめんに吹き渡る夜風が

田に足跡を付けながら

山稜に向かって昇っていきます


今宵の生命も

翅震わせる灯火なのだと思いたい

そんな雨上がりの夜になりました

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