目まぐるしく苦しい
三辻 ペネ
0日目. 序章
同じ朝、同じ教室、同じ毎日、繰り返しの中に生じる僅かな変化に順応しているつもりで。
俺たちは何もわからず、すれ違っていたんだ。
交差する毎日を理解するのはいつだろうか。
___通ずるのは俺、立花 翔 だった。
0
日曜の夜のこと。
『ニュースみた?』
クラスメイトの岡野からのLINEが発端だった。
珍しいな、ニュースの話題を出すなんて。そう思いながら疑問符を返すと
『滝沢先生…亡くなったって。』滝沢先生とは新米の数学科男性教師のこと。かっこよくて、運動もできる。なのにどこか抜けていて男女問わず生徒に人気だ。
液晶に映し出された文字を見て、何かの冗談だと思った。
『なに?ドッキリ?』岡のことだからどうせ俺をからかっているんだろう。そう思った。
『違うって、ニュース見てみろよ。』
そこまで言うのなら…と思いテレビの電源を入れてみる。
チャンネルを変えるまでもなく、目に飛び込んできたのはデカデカと書かれた人身事故の文字。上空からであろう映像の悲惨な現場。すぐそこの買い物通り。大きな鉄鋼のようなものが散らばっている。
『只今男性の身元がわかりました。現在病院に搬送されましたが救急隊員到着時には死亡が確認されていたとのことで…』
女性アナウンサーが緊迫した表情で原稿を読み上げた。
「…」
『夕方に鉄鋼が落ちてきて、事故で……滝沢先生のことだと思う。』事件を記したスクリーンショット共に送られてきた。
「まじか…」特に接点はなかったものの、毎日学校で見かけていた人間がこの世にいないなんて。
突然のことであまり感情は表に出なかった。
その日はなかなか寝付けなかった。ギュッと手先が凍っている。
明日に来ないでくれと願いながら眠りについた。夢ではないと、わかっているけど。明日はもうすぐそこまで近づいていた。
next
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます