32  浅葉⑦

 浅葉は資料室に入ると、ほぼ自動的にそのファイルを手にしていた。


 資料が必要だったわけではない。このファイルは数ある中でも特に見飽きている部類で、むしろここになど書かれていない情報が山ほど浅葉の頭の中にあった。


 しかし、ここへ来て紙を触りながら思考を巡らせていると、なぜか歯車が回転し始め、妙案がひらめくことがある。


 何度も通った道ほど、新しい目で見ることは難しい。浅葉はその新しい目を、自分の中に求めていた。

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