TBB短編

@lukousou

【迷子のウイングさんとアーグネットのお巡りさん】


「迷った。」

「そんなふてぶてしい迷子があるか、帰れ。」

「帰れないから迷子なんだ。」

そりゃそうか。

納得してしまった腹いせに、スマホのGPSを起動させて地図を表示してやる。

「地図が読めたら迷わない。」

「はじめから諦めるな。まず見ろ。」

やれやれ仕方無いなぁと言わんばかりに地図を覗き込み、あっちか?と全く逆の方向を指差す。

「戦闘員でさえ帰巣本能はあるのに。」

「早稲田は大切な場所だが、『巣』ではない。」

「…今までどうやって生きてきた。」

「私は1人ではない、仲間がいる。」

「カッコよくキメたつもりかもしれないが、それくらい1人でやれ。帰れ。」

肩を揺らして笑うからなんだと問えば。

「ここで消すとかでなく、帰れと言ってくれるのだなと思って。」

笑われた意味を理解して一瞬機熱が上がったが、これはあくまでも怒りによるものだと主張したい。

「ありがとう、お巡りさん。」

ヒラッと手をふって、ヒーローのわりに猫背気味な後ろ姿はどんどん早稲田から遠ざかる。

本物のお巡りさんが白チャリをとばしているのが見えて、なるほど俺が全身紺色だからかと合点した。ふざけるな。


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