第14話 絶望に変わる希望

どれ程走り続けただろうか


足が上がらなくなりそうになる


精一杯息を吸っても苦しくて堪らない


心臓が破裂しそうな程早鐘を打つ


時間の感覚は最早分からない


何度も逆方向に逃げ惑う人達とすれ違った


皆パニックを起こし必死の形相で王城を目指し走って行った


声をかけて逆に逃げろと喚起しても誰も聞いてはくれぬだろう


それよりも今自分が出来る事


この状況を打開する為に自分が出来る事は...


そしてついにその足を止める


今彼女は三日月亭の前に立っている

幸い周囲に見える範囲に魔物は見当たらない

直ぐに駆け込み丈夫なドアにカギを掛け工房への再び走る


「はぁ...はぁ...はぁ...はぁ...はぁ...」


膝に手をつき息を整える彼女の前には


ー工房で解析していた大型神機ー


(もしも、この神機が巨大な兵器であるなら...

 その可能性が僅かでもあるのなら...

 これ程のエネルギーを持つ神機、もしかしたら

 この状況を打開出来る鍵になるかもしれない

 今の私に出来る事...私にしか出来ない事...)


僅かな希望的観測と願いを込めて

ゆっくりと起動箇所へ手を差し述べる


フォオオオオオン


前回同様、無数の透明な表示板が表示される

そして...昨日触れる事の無かった、あの手形の部分に手を翳す



ピーッ!



電子音が発生させた後、小さな表示板が消えいく


その後正面に巨大な1枚の透明な表示板が現れた

そこにはこの遺跡都市と見られる緑の輪郭線の地図が映り

その殆どの区域は赤色に塗られていた


「これが...本当のこの都市の全容...!?」


その地図は立体的であり一番上部は今の都市、地上だと推測できた

そしてすり鉢上地下深く、その隔てられている線一つ一つが階層だとすると

その階層は優に50階層は超えている様子であり

下に行けば行くほどその区域は真っ赤に塗りつぶされている

下に比べれば上部はまだ塗りつぶされている区域がまばらであった


「やっぱりこの都市で何か良くない事が起きている様ですね...」


様々な神器の表示研究からも基本的に危険色の赤は古代人も同様に

何か良くない、不良、危険、不可等の否定的な意味で使っていた様である



%&^*(!_&$)(@!#*&_%*!@&% !()_%*&#^



程なくして、今までの繰り返しの音声とは異なる内容のアナウスが流れ始める


---都市の--権限者----死亡-認---権代理---承認---状況は--Ω---救援---要---か?



(前半は良く分からなかったですが、最後は言葉は【助け】

 やはり何かの救援用の兵器か装置かもしれません!)


正面の表示版に次々と横に文字が流れる様に現れる

そして最後の文面が表示されると、最後の文字が点滅を繰り返す


【Y/N】


まるでその答えを待っている様に


(これは何方かに触れれば良いのでしょうか...

 どうか...どうか、私達を救う力をっ!!!)


出来る限りの願いを込めて点滅する左の文字に指を差し伸べる


すると僅かな間隔の後


ピーッ!


----要請を------受諾--直ち---優先--SS----


プツン...


直後電子音の後音声アナウスと共に正面パネルの表示が消える


直後神機全体の機械部の隙間という隙間から

激しく光りを放ち甲高い機械音を鳴らし始める


キィイイイイイイイイ!


慌てて神機から離れた直後


イイイィィィ...カッ‼


吹き飛ばされそうな程の凄まじい風圧と共に工房の天井を吹き飛ばし

眩いばかりの金色の光の本流が天へと一筋の線となり伸びてゆく


その一筋の光の柱に瞳に映し見つめる


その光はただただ少女には美しく見えた


しかしほんの数秒もすると徐々にその光の柱は徐々に弱く霞がかり

やがて、完全に消えてしまった


「ぇ...」


慌てて装置に駆け寄り確認する


先程までの場所に何度も手を触れるが

今までの様に神機は立ち上がる事はもう無かった

すぐさま近くにあったエネルギー測定器で神機の解析を行う


神機内に残っていたエネルギーは完全にゼロになっていた


「そ、そんな...」


(対空兵器だった...?最後の1発...?もう何も起きない...?)


グルグル思考が回る

手に持っていた解析機をその場に落とし立ち尽くす



ギシッ...


「っ?」


頭上から木材が軋む様な音が耳に届く

異音の方に目を向けようとしたその時


突如、セルヴィの視界が瞬間移動し


直後猛烈な激痛が全身を襲う



「あがっ!!うぐぐぅ...!」



数秒遅れて自分が工房隅の柱に叩きつけられたのだ理解した

咄嗟に左わき腹に添えた手と厚手の作業ローブは

腹部からスカートに掛けて真っ赤に染まっていた

血の味が口一杯に広がる


視界がゆがむ中、正面には



キシャァアアアア!!



あの飛行していた化け物が工房中央の神機を握り潰しながら佇んでいた


如何なる方法をもってしても傷一つ付けられなかった神機が

化け物の足によりまるで神細工の如くへしゃげてしまっていた

先程の神機の発動で開いた天井の大穴から侵入したのだろう


(全て...無駄だった...ですか...)


やがて魔物はすぐに此方に狙いを定めると

工房の機材や設備を吹き飛ばしながら

真っ直ぐこちらに突進してくる


(これで...終わってしまうのですか...


 折角皆さんが命を懸けて作ってくれた機会...


 無駄にしてしまいました...


 ごめんなさい...)



涙に曇る視界にもう1メートルという所まで魔物が写る

ゆっくり目を閉じようとしたその時


「炎の聖霊よ!我の魂に答え今こそ力を示せ!!

 フレイムブラストォォオオ!!」


魔具発動詠唱の声と直後

轟音と共に目の前に迫った魔物を

壁を突き破り現れた巨大な炎の槌が横へと吹き飛ばしていく


「大丈夫かっ!セルヴィちゃん!

 第一分隊、外周警戒を維持!

 第二分隊は内部の索敵せよ!」


大きな深藍色の分厚い装甲鎧を纏い

そして手には見覚えのある炎の魔具が埋め込まれた槌を握り

白髪の髭をたっぷり蓄えた巨漢初老の男に抱きかかえられた


同じ色の重鎧を纏った者達が次々と工房内に駆け込み

周囲の警戒を開始する


「ジャッ...カス...さん...?」

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