第10話 期待と終わり

そんなハワイでの生活も慣れてきた7月のある日、メールが届いた。


《利香、ハワイにいるんでしょ?自分もハワイにいます。ちゃんと話し合いたくて追いかけて来ました。ホテルも何もとらずに来ました。見捨てられたら死んでしまいます。》


えっっ?!何?!追いかけて来たって・・・。ウソでしょ・・・。ハワイ上級者のくせに、死んだりしないよ。


せっかく何もかも捨てたはずなのに。まさか逢いに来るなんて・・・。


でも、ハワイが、非日常が、私の背中を押す。メールの返信に指が触れる。


「ウソでしょ?バカなの?」


「口が悪くなってる(笑)」


「本当にハワイ?今さら何?」


「二人の大好きなハワイで終わりにしよう」


終わりにしよう・・・か。じゃあ、いいかな?一方的過ぎたから、けじめがつけたいのかな。


彼はDFSのスタバでコーヒーを飲んでいた。


「ハワイのキャラメルマキアートってキャラメルの量が半端ないよね。」


私の大好きなキャラメルマキアートを差し出しながら笑った。ズルい。また笑顔に引かれそう。心が引き戻される。


「一方的でごめんね。でも、もう決めたの。」


それしか言いようがない。


「突然すぎ。ビックリするだろー。目の前が真っ暗になったぞ。でも、自分はまだ引き止める立場にないから。だから利香が決めたなら諦めるしかないから。だからちゃんと顔を見てお別れがしたい。」


ヤバい。まだ私はこの人を離したくない。やっぱり全部取り消しだって言いたい。でも、ここで振り出しに戻ってしまったら、今までの悩んだ自分が可哀想に感じた。


口から出そうになる叫びをぐっとこらえて。


「今までありがとう。ハワイまでありがとう・・・」


「自分こそ、ごめん。ありがとう。本当にありがとう。本当にごめん。」


そんなに何回も謝らないでよ。本当に終わりを感じる。


「利香に最後のプレゼント。この歌は女の子の気持ちなんだろうけど、なんかすっげー解るっていうかさぁ。聴いてみて。最後にこういうの渡されると嫌かもしれないけど。」


渡されたのはHYの「for you」だった。


彼はそのまま空港に向かい日本行きの飛行機に乗った。私は何も言えなかった。何かを期待していたのかもしれない・・・。


本当に全て終わったことを実感した。

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