出来事1~新人整備士、初日で置き去り~ノンフィクション率100%

「うぅ、どうしよう…めっちゃ緊張してきた…」


昨日まで最後の学生気分での生活を送り、俺はついに今日社会人としての一歩を踏み出そうとしていた。


「学生の頃は乗ってる車の整備やら職場体験やらで世話になってたけど、今日からは逆に俺が世話しなきゃならないんだよな…うん、きっと大丈夫!頑張ろう!」


緊張していても仕方ない、そう思い緊張感を振り切り俺は就職する会社の扉を今―


ウィーン…


開けるというよりは勝手に開いた、自動ドアだったのね(笑)


「………皆さん、どうかご指導の程よろしくお願い致します!」


「おぅ、よろしく」


「うん、よろしくなぁ」


「よろしく」


「まぁ頑張れよ」


自己紹介を済ませた後、それぞれ一言ずつ短く挨拶するツナギを着ている先輩整備士達。

俺もこれからこれを着て仕事をするんだなとドキドキと不安を入り交じらせながら思っていた、その時だった。


「挨拶は済んだか?」


「し、社長!?は、はい!大丈夫です!」


背後からこの会社の社長に声を掛けられ、俺は緊張しながらも応える。


「おぉ、元気があっていいなぁ。じゃあ早速行くか!」


「はい!…?あの~、すみません社長。行くってどこにですか…?」


てっきり先輩達と一緒に仕事をすると思っていた俺は、その言葉に思わず質問した。


「ん?入社初日からモラロジー研修に行くって言ってねえっけか?」


「…え?」


モラロジー研修て、何?

頭の中が疑問符で埋め尽くされながらも社長の車で向かうこと数時間。


「んじゃ、後は中の人の指示に従ってな。俺はもう行くから」


俺を車から降ろし、社長がそう言い残して去っていったのを呆然と眺めた後改めてその建物に目をやる。


「な、何で初日からこんなことに!?」


俺はそのモラロジー研修なる所に1人で受ける嵌めになった。

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