第62話 たいとるがうかびませんの話
やあ……どうも。
「ぺこりさん」
おお、誰かと思えば、銀座線、ではなくて、任務に失敗して尻尾を巻いて逃げてきた、かっぱくんではないかね。
「かっぱに巻くほどの尻尾はありませんよ。それより、この前、ぺこりさんは『クィーンエリザベスⅡ号』を送ってくれるって言ったじゃないですか! なのに、きたのは『第二女王丸』とかいう、はえなわ漁船じゃないですか! 一応曳航してくれましたけど、あちらさんの方が沈没しそうでした」
まあ、無事でよかったじゃないか。『第二女王丸』はイングリッシュ訳だったな。すまんすまん。最近、石川遼くんにスピードラーニングをもらってね。学習してるの。
「エリザベスが抜けていますけど!」
ああ、船長の田之倉さんの奥さん、元はキャバクラで働いていて、その時の源氏名がエリザベスでさ、田之倉さん、『第二女王丸』のこと「俺のエリザベス」っていうわけ。どぅーゆーあんだーすたんど?
「イエス」
まあ、そういうわけだから、きみは反省文を書いて、もちろん組織内ネット上にだよ。しばし、謹慎だ。組織のマネジメントは入社七年目の真黒太郎(まっくろ・たろう)に任せる。
「あんな型落ち野郎に任せていいんですか?」
真黒太郎、本名、MacBook Proは「すぐに壊れる」ので有名なApple製品で異例の長寿を誇っている。ただねえ、メール機能がないのよ。どうしても繋がんないの。
「役立たずじゃん」
バカ、そこを補うのがこれまた入社七年目の不音太郎(ふぉん・たろう)じゃ。本名はiPhone4S。
「おじいちゃんじゃん!」
うるせえ、実績を上げてから文句を言え。もう、三月も近いぞ。“王政復古の大号令”作戦を本格発動させるのじゃ!
「ははあ」
おいらは、かっぱくんたち部下との意味のない寸劇をやると、疲れがドッと出ます。今はお布団にくるまってこの駄文を書いています。軽い鬱なんでしょう。ヒトのバイオリズムは一定ではありませんから仕方がありません。
さて、平成最後の四ヶ月のうち、半分が終わろうとしています。そのたった、二ヶ月で恐ろしい数の事件、事故、ハプニング、訃報、悲報、朗報が湯水のごとくこの世を流れていきます。どんな大事件も、いつかは忘れ去られるのです。時とはなんと無情なものでしょう。
おいらは考えます。生き物とは本来、自分という生命を維持することのためだけに生きていればよかったのであります。それが生命を維持するという行為が楽しみ、という感情になっていきます。自分の命を守るために、食料となる獲物を捕食する。それがやがて狩猟になり、ハンティングになり、どこかが崩れて、殺人になってしまいました。止むを得ず殺すものもいますが、快楽殺人者なんていうのは、原始の生命維持本能が狂ってしまったものでしょう。
いちいち、例を挙げるのはめんどくさいので、まとめて言っちゃうと、現代の世界は、原始の生命保持機能が欲望というものに変化して、どこかで、おかしくなっちゃった結果なのではないでしょうか?
悪の権化であるおいらは、表立っては“王政復古の大号令”作戦を発動していますが、その裏で“アダムとイブとノアの箱舟”計画を推し進めています。内緒ですよ。かっぱにも言っていないんだから。簡単にいうと旧約聖書のような大きな船を作って、地上のあらゆる生物を3つがいずつ、乗せます。あとはおいらと美しい女性、それはぺこりの勝手にランキング上位百人を乗せます。男はどうしようかと思いましたが、賢くて、若いイケメンを十人くらい、奴隷として乗せておきましょう。おいらには生殖能力がないですからね。
で、申し訳ないんですけど、残りの皆さん大洪水で天国に行ってください。あちらでは良い待遇にしてもらえるように、各所に頼んでおきましたので、いまより、ずっと楽しい天国生活が待ってますよ。天国良いとこ一度はおいで。飯は美味いし姐ちゃんは綺麗だ! ただ、ある一部の方には閻魔大王のお裁きを受けてもらい、その結果、地獄の方に行ってもらいます。大丈夫です。死にませんから。だってもう生きてないもん。阿呆さんと桜田さんと片山さんと金正恩さんとトランプさんとプーチンさん、俳優M、小説家Kは残念ながら地獄確定です。年期明けがいつかはわかりません。大丈夫です。住めば都。血の池地獄がいい湯加減になります。
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