二回目の告白

愛坂 蒼

第1話

 電話越しだが彼女と久しぶりの会話だと言うのに彼女が何か言っているがその言葉は俺の耳を通り抜けてどこかに消えていくかのように聞こえなくなっている。

 簡単に言えば今、俺と彼女は別れ話をしている。先程、彼女から一言「私と別れてくれない?」と言っていたから彼女は何か別れる理由のようなものを述べているのだろう。

 正直、俺は頭の中は何故こんな事になっているのだろうという考察でいっぱいになっていた。

 だから俺は彼女の言葉に適当に相槌を打つことしかできなかった。もちろん内容は頭に微塵も入ってこない。

 最後に彼女が「だから別れたいの。ダメ?」と言ってきたことははっきりと聞こえた。

 俺は即答で「別れたくないに決まっているだろ」と言いたかったがその言葉を飲み込んだ。ドロリとした重いものが俺の腹の底で渦巻いていくのが分かる。

 代わりに俺の口から出た言葉は「お前がそうしたいならそうしよう」だった。俺の心臓がドクドクといつもの倍以上の速度は出ているのではないかというくらいには早く脈打っていた。

「わかった、じゃあ別れよう。じゃあね」

 彼女は最後にそう言ってすぐに通話を切った。

 俺は通話が終了した携帯の画面をしばらく眺めたあと座っていたベッドに携帯を放り投げるとそのまま後ろに倒れこんだ。

 何もやる気が起きない。幸いにも明日から三連休なので彼女と会うことはないだろう。

「その間に立ち直れるかな…」

 ベッドに仰向けになっていたため睡魔はすぐにやってきて、俺は抵抗する余力もなくそのまま睡魔に身を委ねた。

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