第77話

吉永が話していた事があった。伯父さんの 法事の話をした時に、伯父さんは胃癌だったと言った。そして、自分の父親は肝臓癌で 亡くなったと。他にも親戚に癌で亡くなった人が何人もいると話していた。だから確か リナは言った筈だ。           「気を付けてね。癌になったら大変だから。」                 その時、吉永は笑いながら言った。    「大丈夫だよ。いつも健康診断で何とも無いから。」        


そうだ、だからだ。吉永の家系には癌が出安いんだ。もし千帆が流産し安いのなら、吉永は癌に縁があるのだ。富貴恵は呪ったからだと言って、本当にそうだと思って喜んでいたが。                  でも、それにしても凄い執念だ。そこまで やるとは…。しかも その過程でハムスターを二匹も殺したなんて。普通、そんな事はできない。                以前、吉永が付き合わない方が良いと言っていた。余り良い子では無いと。あれはオブラートに包んだ言い方だったのだろう。吉永は見抜いたんだ。                  だが吉永は自分にも言った、あの変貌した 時に。そんな目立つ、日本人に見えない顔をしていて誰も一緒になどいたくないと。普通に外を一緒に歩きたくないと、そんな事を言った。                 だが、確かにそうだ。全ての人がそうかは分からないし、又そんな風に思いたくない。だが吉永が言った様に、確かに一般的にはそうだ。                  だから構わない!!いないよりいた方が良い。自分は富貴恵といると楽しい。自分には優しいし良いんだから。それに、普通にしていればそんな凄い事を自分にはしないだろうから。                 大沼と会ったのはこの日が最後だ。他の雲母の連中、千帆も含めて、とも辞めてから会っていない。吉永の事も、だからその後の事は知らない。               だからリナは吉永の事も雲母の事も、こうした出来事があった事もその内忘れてしまった。                  そして、時は流れた…。

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