第70話
その後、千帆は吉永と別れ、彼が借りた マンションを出た。吉永は、そのマンションの為に買った家具をいらないからと、全部 千帆にあげた。好きにして良いからと。 千帆は喜んでそれらを引き取った。家族との アパート住まいに戻るので、入る物は持って行き、後は適当に売ったりした。 こうした会話を萌達がしているのを聞いた。そうか、吉永の計画は失敗したのか。 リナは千帆が子供を産めなかったり、別れた事に安堵した一方、吉永に同情した。可哀想に思った。そして、自分なら産めていただろうと思った。一度の妊娠で子供を産んでいた だろう、と何故か確信した。 それからは吉永や千帆の話も聞かなくなった。 リナは相変わらず店に毎日出勤した。 たまに富貴恵とも会い、食事をしたり酒を 飲んだりした。富貴恵とも自然と吉永の話はしなくなり、彼女も吉永の事などもう忘れているかどうでも良い様だった。 そしてリナはしばらくすると店を止めた。 他店で募集していた所に、前に一緒に働いていた女の子がいて、電話がかかってきた。 今募集しているし、良かったら来ないかと。吉永の事は大分落ち着いてはきていたが、 やはり今の店にいるのも段々と嫌になって きていた。何か変化が欲しい!そう思って いたのでそこに面接に行った。 同じ関内エリアだが少し互いに離れている。駅からはどちらもそう大して違う距離では 無い。面接に行き、嫌な雰囲気の店では無いし、そこには知り合いもいる。 リナは雲母を止めた。そしてこの新しい所に働いて、段々と慣れてきた頃だ。互いに仕事に行く前にその日は富貴恵と会った。関内駅で会い、何かを食べようと、二人で歩いて いた。 すると、目の前から大沼が歩いて来る。 アッ、嫌だな!会いたくないな。自分が辞める時、最後の日に大沼はいなかった。何か うるさく話しかけてきたら面倒臭い。 リナは気付かないふりをして、下を向いて通り過ぎようとした。 「マリンちゃん!」 大沼が気づき、声を掛けてきた。そして嬉しそうに、足早に近づいて来た。
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