第60話

「じゃあ、…」            「何?!」               「じゃあさ。私にも買ってよ。」     「エッ?」               「私にも、ネックレス買ってよ。千帆ちゃんにあげた様な、サファイアやダイアが散りばめられた凄いネックレス。」        吉永が驚いた顔をしてリナを見た。    「あれ、そうでしょ。あの子、他の女の子二人に凄く嬉しそうに見せてたから。」   吉永がまだ驚いているので続けた。    「店にして来たんだよ。それで、吉永さん から貰ったって言って見せびらかしてたから。私にも聞かせたかったのかもね。あの子って、凄く嫌な意地悪い子だから。」    最後の千帆についてのコメントは、少し悩みながら言った。言うのは止めようかな、と。でも構わない、わざわざ自分に会いに来てるんだから。そんな事で怒らないだろう?だから口に出した。             「分かった。じゃ、買いに行こう!リナが 好きな、欲しいやつを買いに、今から行こう。それで、凄いのを買えば良い!」   吉永は嬉しそうに言った。        リナは本当に買いに行きたいとか行こうだとかは思っていなかった。確かにそうした宝石は欲しい、女なら誰だって普通そうだろう。だが、今本当にしたかったのは自分が何で 呼ばれたか、その理由だ。それと、あの時の事をもう少し丁寧に、自分の口て誤って欲しかった。手紙だけではなくて。      やり直したいのなら何故早くその事を言わない?何故もっとちゃんとに謝らない?自分はまだあの日の出来事に傷ついている。あそこまであんな大事になり、嫌な思いをした事 に。                  「ねー、それよりも話しって何なの?」  「お腹は空いてないんだよね。」     「エッ?うん、だけどお茶位なら…。」  「じゃ、どっかリナが知っている所に入ろう。」                 「分かった。良いよ。じゃ、美味しいホットチョコレートを出すお店があるんだけど。 あぁ、ココアなんだけど。最近行かないけど、確かまだあると思うし。」       吉永がジッと顔を見て聞いている。    「そこ、ダンキンドーナツって言う    ドーナツ屋なんだけど。アメリカの。   そこで良い?」             「ドーナツ?うん、良いよ!」      吉永が嬉しそうに返事した。       この人、甘いのが好きだったっけ?何だか 凄く嬉しそう。そう思いながら歩くと、  吉永も早く行きたそうに、凄く嬉しそうに横を歩いている。             今はもうそこに無く、違う店舗になった  ダンキンドーナツへ二人で歩きながら、  リナはさっき収まった筈が、又腹が立ってきた。                  何でこんなに嬉しそうなの?そんなにドー ナツ屋に行きたいの?自分と又こうしているよりも、ドーナツやココアの方が良いみたい?!                 ダンキンドーナツは伊勢佐木町通りの奥の方にあるから、何かそんな不快な気分でそこまで行きたく無くなった。吉永を連れて行くのも嫌になった。             止めよう!いつもそうじゃないか。いつも、なんだかんだ言って結局は全て、そうでなくても殆ど全てが吉永の好きな方や、好きな事になる。                そしてリナは、伊勢佐木町通りの入り口付近にあるケンタッキーフライドチキンの店内に、当たり前の様に入って行った。   「何?ドーナツじゃないの?ココア飲むん じゃ。」                 吉永がガッカリした様な、不満そうな声を 出した。リナは黙ってカウンターヘ行った。吉永も仕方無く着いて行く。       「いらっしゃいませ!」         元気に、若い女の子の店員が言い、注文を 聞いた。リナはコーヒーを注文して、それ だけで良いと言った。吉永も仕方無く、  何かのセットを注文した。そして、お金を 払う。トレーを受け取り、席に着く。吉永が食べ始めた。そのチキンを貪る姿を見ていると、又腹が立ってきた。         何なの?何をガツガツ食べてるのよ!私に 話があるんでしょう。          だが、リナは吉永が昼食を食べていないのを知らなかった。自分と会う為に食べずに出てきたのだ。千帆の所に泊まって、そこから 出て来たからだ。千帆と昼食を取りたく無かったか、物を食べる気がしなかったからか。 早くリナに会いたかったからか。とにかく、リナに会った時には空腹だった。二時間近くかけて来たから。ましてや、吉永は体格が良かった。背が高く、平均よりも少し肥えていたから。                食べている間、吉永は殆ど何も話さなかった。何度か、リナにも自分のセットの食べ物を勧めたが。              三度目に、リナは少しポテトを食べた。すると吉永がチキンも食べるかと聞いたので断ると、少し手で肉をちぎり食べる様に勧めたのでそれを口にした。           本当はここのチキンは大好き。だがこの日は別に食べたいとは思わなかった。     やっと食べ終わった吉永に話を促した。

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