第15話

「うん、どう思う?」          吉永が目を覗き込んだ。ふざけてなどいない表情だ。                「何で私なの?」            リナはやっと、そう言った。       「リナちゃんか好きだからだよ、決まってるでしょう?」              「だけど…。」             「リナちゃんと僕の子供なら、素晴らしい子が生まれると思うんだ。僕達はどちらも背はあるし、僕の家系は、前に話したけど、皆警察官だ。リナちゃんのお父さんはアメリカの軍人だし、だからどちらに中味が似ても、警察官に向く筈だよ。」          「でも、吉永さん…。」          リナは困った顔をしながら、思い切って口を開いた。                「もし、もしもだよ?」         「うん、何?」             「もし万が一私に似ちゃって、外人に見えたらどうするの?嫌でしょう?!」      吉永は驚いた顔をした。         「そんなの全然平気だよ。もしそうなら、東京のアメリカンスクールに入れればいいから。そしてアメリカの大学に行かして、アメリカで住めは良いんだから。そして、たまに会いに行けば良いんだからね。」     「東京のアメリカンスクール?」     「そう。だから何も心配なんかしなくても良いんだよ。リナちゃんが僕の子供を産んてくれたら、リナちゃんの面倒は一生みるし、僕の所からそんなに遠くない所にマンションを借りるから。ちゃんとしたマンションを。だから、何も心配する事ないんだ。大体、リナちゃんの子供なら、凄く可愛いだろうしね。」               「そ、そうだね!それに、片っぽが外人みたいでも、もう一人産めば、そっちは日本人みたいかもしれないしね?」        「もう一人? 」            「うん、そう。あっ、一人じゃなきゃ駄目だった?」                「いや、駄目じゃないよ。全然駄目じゃない!」                 「良かった!」             「じゃ、良いんだね?」         リナは思わず、変な展開になった事についてまずいと思った。だが吉永の話の内容をもう一度しっかりと考えてみた。決して悪い話では無い。自分ももうそんなに若くは無い。今、もう三十だ。見た目はまだ二十代に十分間違われるが、もういつまでも水商売などをしたくない。元々向かないし、好きではない。できれば早く止めたい、といつもそう思っていた。  

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