第13話

「何?冨貴恵ちゃんの事って?」     「リナちゃん、彼女とは付き合わない方が良いよ。」                「エッ?どうして?」          「あの子、あんまり良くないから。」   「何言ってるの、吉永さん?」      「あの子、いい子じゃないよ、リナちゃん。」                「一寸何言ってるの。そんな事ないよ!」 リナは又腹がたった。          「何でそんな事が分かるの?!」     「そんなの見たら分かるよ。それに、リナちゃんはもう忘れたかな?あの後、具合が悪くなったからね。」            「何の事?」              「ほら、僕の名刺をくれって言ったのを、忘れた?」                あっ、そういえば…。          「あの時リナちゃんも凄く驚いていたじゃない?僕もあんな事言うから驚いたけど。」 「あっ…。」              「リナちゃんが僕の連れで、彼女はそのリナちゃんが連れて来た友達だよね。なら普通は絶対にあんな事言わない筈だよね。リナちゃんも直ぐに注意したじゃない?だけど彼女、何度もくれって言って凄くしつこかったね。だから、今日は名刺入れを忘れたって言ったのに、それでも一枚位どっかポケットに入ってませんか、なんて何度も繰り返したよ。どう、思い出した?」           そうだ、確かにそうだった!何でそんな事を忘れていたのだろう。吉永が言う様に、そうしたやり取りの後に、自分は具合が悪くなった。それは、名刺をもらえなかった冨貴恵が、又おでんを幾つか注文して、自分にも食べようと勧め、最後にもう一つだけと思い、食べた。そしてそれで最悪の気分になったのだ。                  「思い出したよ、吉永さん。」      「思い出した?」            「思い出したよ。あの時は何であんな事言うのかって頭に来たけど!吉永さんが名刺あげたらどうしようって!私、彼女が聞いてくれないから吉永さんに嫌だ、止めてって小さな声で頼んだし。」            「そうだったね。」           「だから冨貴恵ちゃんは酷いって思った!でも、結局もらえなかったんだから良かったし、だからもうその事は良いの。もう連れて来ないから。だから余り悪口は言わないで。」                「リナちゃん。」            「もう止めて。でないともう帰るから。」 「分かった。じゃあもう彼女の話は止めよう。もっと大切な話がしたいし。」

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