トビラ

Lie街

第1話 待ち人

深い 深い 森の中

1人の少女が開かない扉に背もたれをする、

膨大な書物の中に1人静かな呼吸が室内に響く。

「おい、誰かそこにいるんだろう?」

その日は珍しく声をかける者がいた。


「あら、珍しい。お客さんかしら。」


「おや、お嬢さんだったか。これは失敬。俺は旅をするものだ、しばらくここで休憩してもよろしいかな?」


「構わないわ、その代わり私の話し相手になってくださる?」


「よろこんで。」

男は扉越しに背中合わせになるように座った。


「ところで、嬢ちゃんは何でこんな所にいるんだい」


「私、閉じ込められているのよ。恋人が鍵を持って迎えに来るのを待ってるの。」

それを聞くと、男は笑って言った。


「おとぎ話みたいな話だな。」


「冗談じゃないの、本気で待ってるのよ。」

微かに怒気を孕ませた声が聞こえる。


「あぁ。分かってるよ。その恋人はいつ来るの?」


「分からない。だから待ってるの。」


「いつ来るかも分からない相手を?」


「うん。だって、待つことは、愛するということでしょう?私は彼を愛しているもの。」

明るくはねた声が扉越しにでもよく分かる。


「本当に、好きなんだな。恋人のこと。」


「うん。」

少し照れた声だ。


「次は私の番」


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