旧世紀

黒楠孝

旧世紀

 作:北見悠平


 今は昔の物語

 あるところに誰かの影があり

 昔は今の物語

 あったはずの影を追いかける人がある


 すべてが一つの連なりで

 一つがすべての破片なら

 失うことと得ることは

 決して同じではないよ


 あなたが消えた世界では

 何もかもが当たり前に美しく

 最初から何もなかったみたいだけど

 それは嘘だと知っている僕がいる


 雨に唄えば虹は架かるが

 空が滲んで見えづらい

 ひどく疲れた帰りの道で

 一人静かに俯いている


 どれだけ寝ても眠いから

 いっそ寝ないで暮らそうか

 どれだけ起きても眠れないなら

 このまま眠り続けて死ぬ


 何もかもが変わってゆく時代

 何もかもが終わってゆく世界

 だから、これは旧世紀の物語

 どこにでもあるお伽噺


 陽光がただ眩しくて

 少し目に沁みたようだった

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