第13話 北の森 ①
早朝、静かな森の中に三人の足音が響いていた。
「ふーん、朝の森って結構静かなんだね~。ねぇねぇ!珍しい動物とかいないかな!?」
朝早くから明るく元気良く声を出しているのは魔王の娘だ。
黒いワンピースに白い杖、頭には黒い帽子を被っている。
王道な魔法使いスタイルである。
「そうだな、この辺りの動物は夜行性が多いからなー」
辺りを見渡し様子を伺いながら歩いているのは武器屋だ。
商売道具がぎっしり入った大きなリュックを背負い、首にはタオル、頭にはバンダナを巻いている。
武器屋らしいスタイルである。
「北の森ってこんな場所だったんだ……ボク、初めて来たかも。村からあまり出たことなかったから……」
初めて来る場所に不安を感じているのはニートだ。
青いジャージに白い軍手とスニーカー、頭には白い鉢巻を巻いている。
……。
これこそが、ニート風スタイルだ。
「……。と、ところでさ!どうして北の森に行くんだ?」
挙動不審気味に歩いているニートの質問に、武器屋は「ああ、まずはその説明からするか」と語りだした。
「俺の店はさっき見てもらった通り、北の森に面している。森では普段、道具を集めたり実験をしたりしているんだ。だから俺はこの森のことは割と詳しいつもりだ。なんだが……」
そこまで言うと武器屋は立ち止まり、一瞬、森の奥深くを睨みつけるような目をした。
「この森は……北の森は、まだわからないことが多すぎる。ニートは知っていると思うが、お嬢ちゃん、魔法村に入って来たときに通った道があっただろ?」
「うん、案内人さんがいるって聞いてたけどいなかった所だね!」
「そうだ、その場所だ。魔法村への出入口は現状、その南の門だけなんだ。村の東と西は山に囲まれていてな。北の森は危険な場所だとされているから滅多に人が立ち入らないんだ」
「えっ!ここ、危険な場所なのか!?」
ニートの顔は恐怖で一気に青ざめた。
「まあ、最後まで話を聞け。危険な場所だと言われているが、俺はそうだとは思わない。強いて言えば……そうだな、神秘的な場所だな」
「神秘的?」
魔王の娘が首を傾げた。
「ああ。俺はよく魔法使い専門の武器を作るんだが、この森で集めた資源はやけに魔法との調和が良い。何か理由があるんじゃねぇかと思ってな」
「そうなんだ。それは私も気になるな~」
魔王の娘も何か引っかかるようだ。
「だからな、今回の臭気が魔法絡みの問題なら、この森に来れば何かわかるかもしれないと思ったんだ。特に森の奥の方なんかは未知の場所だぜ?こっちには教会の魔法使い様がいるんだ、冒険する甲斐が有るってもんよ!」
武器屋は楽しそうに語った。
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