第2話 錬金術の師匠カオルとの出会い
「あの…僕のステータスっておかしいのですか?」
カイオーン王が頭を押さえて考え込んだまま動かなかったので、僕の方から声を掛けた。
先程とは違った怒りを含んだ目が突然向けられ一瞬恐怖に震えた。
「いやすまぬ、お主のステータスにちと驚いてしまってな。そうか、錬金術士か…おい、この者に師となる者を付けろ」
「はっ!」
カイオーン王の言葉に兵士の一人が返答を返し、駆けて出ていく。
それを見送ってからカイオーン王は口を開いた。
「カモン殿、お主にはこちらの都合で協力を求める形になってしまうが互いの為に宜しく頼む」
そう告げられ両隣の兵士が立ち上がると体が自然に動いて立ち上がる。
そのまま一礼をしてカモンは挟むように並んだ兵士と共に王の間を後にする…
「ステータスから見るに間違いなく下級錬金術士であろうな、二週間与える、使い物にならなければいつも通りにな」
カモンが去ってから王の間に発せられたその言葉に誰もが表情を歪めるのであった。
「それでは我々はこれで」
「あっはい…」
カモンは個室に連れられてきていた。
中は机が一つにベットが一つの簡単な作り。
そこにカモンは一人残された。
「えっと…とりあえず錬金術士って言ってたよね…」
そう口にしてカモンは地球で以前見たアニメを思い出して両手を合わせる。
そして、床に手を付いて目を閉じた。
「なんてね」
「えっと…なにやってるのかな?」
その声にしゃがんだまま振り返ると入り口のドアを開いてこちらを見ているローブを着た緑髪の少女が居た。
その視線にカモンは顔を真っ赤にして慌てる。
それはそうだろう、過去に錬金術をテーマにしたアニメ『針金の錬金術士』の真似を見られたのだから。
「あっあははっ…えっと君は?」
「人に名を尋ねる時は先に名乗るべきだねカモン君、僕は君の錬金術の師匠になるように言われた上級錬金術士のカオルだ。こう見えても25歳だから口の聞き方には次から気を付けるように」
「あいたっ?!」
そう言いながら屈んでいた僕の背中を蹴られた。
今さっきドアの所に居た筈なのに一瞬で近付かれて蹴られていたのだ。
床を転がり痛みに背中を押さえて仰け反る僕を見てカオルさんは小さく舌打ちをして見下しながら告げた。
「僕は自分より秀でたモノを一切持たない者は人間だと思わない、カイオーン王の指示で君の師を受け持つが人間扱いをして欲しかったら死ぬ気で頑張るんだね…まぁ無駄だとは思うけど」
「分かりました。カオルさん」
「それじゃあまずは基本的な常識から説明するよ、一度しか言わないから」
カオルの説明は口頭で決めてあった内容を独り言の様に口にするだけであった。
それでもゲームや漫画であった知識のおかげでスムーズに頭に入ってきたのは幸いであった。
おかげで理解に苦しむ事が少なかったからだ。
この世界の人間には一人に一つ必ず職業が設定されている。
職業には必ず下級、中級、上級の3つのランクが存在する。
ランク差は出来ることと出来ないことがハッキリと分かれ、ステータスもランクで大きく差が出来る。
即ち生まれた瞬間にその者の未来は確定するのだ。
「今は上級鑑定士が不在だからハッキリとはしないけどステータスからカモン君は下級錬金術士だろうね、だから僕は君には期待しない。そのつもりで」
「わ、分かりました」
その返事を最後まで聞く前にカオルは懐から紙と黒い石を一つ取り出した。
そのまま紙を床に敷いて中央に黒い石を置いて手をかざした。
「念写!」
その言葉と共に手から光が紙に発生し紙に魔方陣が写し出された。
「これは錬金術の基礎となる錬成陣、錬金術士はこれを用いてその力を使う。発動には自身の魔力か魔石の魔力が必要でランク以上の錬金には更に大きな魔力を秘めた魔石が必要になる」
そう言って錬成陣に3枚の葉っぱを置いてカオルは唱えた。
「錬金!」
その瞬間紙が輝き錬成陣の中が光に包み込まれた。
そして、光が収まるとそこに瓶に入った液体が現れた。
「これが下級錬金術の基本となる薬草3枚を錬成して出来る下級ポーションだ。先ずはこれをマスターしてもらう」
僕は目の前で見せられた現象に目を疑うのであった。
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