ライトみゅーじっく!

梶バターレモン

第1話

県立赤峰高等学校

《第二音楽室》

アホ毛がチャームポイントの透矢は窓の満開に咲き誇る桜を見ながら言う。

「雪兄! あの桜を見ると思い出さない?」

隣に居た右目を前髪で隠している雪夜は答える。

「軽音部復活の事か?」

「そうだよっ!」


この物語は廃部した軽音部の復活までの話。



第一話【始まり】

遡る約一年前の話。

桜が満開に咲き誇り花弁と共に

一つ学年が上がって環境が変わり、

新たな出会いへと発展する新学期。

透矢はアホ毛をピョンピョン跳ねながら歩いていると校門付近では部活勧誘のビラを配ったり、呼びかけなどをしている先輩達がいた。

「青春の汗と共にラグビーをやろうぜ!」

と普通の人に比べて身体つきの良いラグビー部の部員が昔懐かしい青春ドラマのように熱心に勧誘してくる。対して隣にいる髪の毛のボサボサで猫背のバスケ部の部員は

「バスケ部でーす(棒)

入部するとモテますヨ(棒)」

とやる気がなさそうに言う。

正直言ってモテるのか?

少し歩くと切羽詰まっているのか焦って野球部を勧誘する野球部の部員が「野球部どうスか?

誰か入部してくんないと大会も

出れねーし廃部になちまう」

と勧誘してくる大丈夫なのか、野球部!?っていっても透矢は入部する気サラサラない。興味もないからだ。思ったより勧誘に必死な先輩やそうでもない先輩達だった。

にしても、さっきからキョロキョロ辺りを見回しているのにも関わらず、透矢はとある人物の言ってた部活どこにもない。

部活によってはビラ配りをしない

少し冷めた室内系の部活もあるとは聞いたがもしくは…まさか……多分勘違いだと思うからこれ以上考えない。透矢はこの場を去った。

それから丸々一日を使って新入生歓迎会が行われた。

内容としては部活動紹介や生徒会紹介、学校行事の詳しい内容などを説明だった。

相変わらず、透矢は赤峰高校の生徒になってからはあの部活にしか興味がなかったが……演劇部の部長らしき人がほんのちょっぴり気になった。

理由としては他の部活にひょこっと現れているような気がしてならなかったからだ。 まぁ、関係のない事だ。気にすることはない。


《職員室》

透矢はその場に居た先生に質問をしていた。


「あ、あの…ちょっと聞きたいことがあって来たんですけど…。」

「ん?なんだい?君は…その色からして1年か。で何の用だ? こちとら忙しいから早くしてくれないか」

「は はひぃ!」

この先生が急かすもんだから思わず噛んでしまった。少し、短気だと思う。

「ええっと その」

「言うか言わんのか、

はっきりしろ!やらねばならない仕事を片付けないとならんのに」

困ってる姿を見て来たのか

一人の女性の先生が近寄ってきた。

「教頭先生、新入生くんが怖がってるじゃないですか。

新入生くん、一度深呼吸してから要件を教えて欲しいな」

「いや~すまんな~菜々子先生。

ワシ、少しピリピリしておったから」

透矢は深呼吸をしてから質問をする。

「さっきの部活勧誘に『軽音楽部』が居なかったですけど

もしかして」

嫌な予感がする、言いたくはなかったけど。

透矢は吐き出す様に言った。

「廃部しちゃったんですか?」


一瞬、この空間が静かになった。



「軽音楽部?

………あぁ!あの部活か、地味だったから忘れてたよ。

軽音楽部なら廃部したぞ」


存在していたかさえも覚えていないかのように軽はずみに言った。

一瞬で透矢を絶望の淵へ送った。

「教頭先生! 他に言い方があるでしょう! 何も、そんなキツく言わなくても」

「だって、本当に忘れてたからしょうがないだろ。」

そう言い残して教頭先生…は立ち去っていった。

どこかで パリン っとガラスにヒビが入った音が聞こえた気がした。


「待ってください!

って……チッ、またやられたか」


温厚そうな菜々子先生がいきなり、キレたので透矢は少々びっくりしていた。


《生徒会室》

森のような緑色の髪を束ねながら

生徒会長の平野 湊代(ひらの みなよ)は部屋で優雅に自分で淹れた紅茶を片手に書類に目を通していた。

隣には胃をキリキリさせながら事務処理をしている二年生の小野 陽人(おの はると)が居た。

そんな陽人を見かけた湊代は微笑みながら言う。

「陽人、貴方少し根詰め過ぎよ。

休息を取りつつ作業を行いなさい。

連続の作業は身体に毒よ。」

と陽人に休息を勧めたが

「いえ、僕には不要です。

休んでいたら終わるもんも終わらなくなります」

と冷静にキッパリ断った。

正面に電卓で計算しながら予算案を作ってる姫路 ユイ(ひめじ ゆい)

がこう反論する。

「副会長!早よ終わらせ、自分の部活に行きたい気持ちはわかる。けど、どうあがいても今日中には終わらへん」

すると、買い出しから戻ってきた三年の書記の佐々木 淳平(ささき じゅんぺい)がたい焼きを持って帰ってきた。

「姫路!そんな訳では…」

陽人が言いかけている途中で淳平が陽人の口にたい焼きを強引に入れた。「んぐぅ(何するんですか⁉︎」

「安心しろ、クリームだ。 姫路妹にはチョコ、平野のは小倉ミルクだ」

と言いながら差し入れのたい焼きをそれぞれに渡した。

「お使いご苦労さま。わざわざありがとう。丁度良かったわ。少し、休憩しましょう。」

「わーい! 淳ちゃん先輩、ありがとうございます」

「後、ポテチとトッポもあるからな。これらは立華からだ。」

とポテチとトッポをテーブルの上に乗せ、淳平は自分の分を一口、食べた。

「淳ちゃん先輩!何食うとるんですか?」

「あー、ピザチーズ味だ。チリドッグと悩んだがこれにした。」

「それ、たい焼きと呼べるのでしょうか?」

「フフフっ、それも一種の個性よ」

と言いつつ紅茶を啜ると廊下からピアノの音色が聴こえてきた。

「ピアノ? こんな時に一体、誰が?」

「コレ、聞き覚えあるような無いような」

「また、立華か。今日は機嫌が良いな」

と言いながら淳平はまたパクリとたい焼きを食べた。


《廊下》

透き通る綺麗な白髪の右目を隠すかのように長い前髪の雪夜が特に用事もなく放課後の新入生向けの部活見学も行かずに帰ろうと歩いていた。

すると、廊下からピアノの音が聞こえた。 気になった雪夜はピアノの音を頼りに歩いて行く。

すると、二階の廊下で速いメロディとリズムの曲を楽譜なしで弾いている茶髪の少し長めの三年生の男子学生が楽しそうに弾いていた。

少し経ってからタイマーの音が鳴り響いたと同時に弾くのをピタリとやめた。 男子学生はタイマーを止めると何もなかったかのようにこう言いながらピアノを元に戻した。

「もう時間か…今日はうまく弾けた方だな」と言い残して演奏を見ていた雪夜も気にせずその場を去って行った。 雪夜は男子学生に見覚えがあった。 何故なら男子学生は歓迎会の時に演劇部の演劇で敵役を演じていたのと時々他の部活にも裏の方で手伝っていたからだ。

「あの人は一体、…何者だ?」

とボソッと言った。


《図書室》

ロン毛で髪を結っている三年の弓道部のヒラ部員の零斗は図書委員長兼弓道部 部長の古舘 文香(ふるだて ふみか)を探しに来ていた。

恐らく、受付で時間を気にせず本を読み漁っているのだろう。

受付前に行くと文香は本を読んでいた。見事、零斗の予想通りだった。

零斗はため息をつきながらこう言う。「はぁ、またですか…。

部長、時間ですよ。」

本に夢中でいきなり声をかけられた文香は驚いて変な声を出していたが表情は顔に出さなかった。

「うわぁ、零斗さんか。 毎度ごめんね。 貸し出し表を仕舞ってから後は…」部活に行くのが遅くなりそうだと思った零斗はまた、ため息をつきながら提案する。

「はぁ、いつまで経っても終わりそうに無いな。 手伝いますから何をしたら良いですか」

「いつもありがとう、零斗さん」

「部員待たせてるんですから早くしてください」

《廊下》

ピンクのウサギのぬいぐるみを器用に頭に乗せたピンク色の髪の一年生が先程のピアノの演奏を教室から聞こえたらしくどんな人が弾いていたか又、自分より才能があるのかないのかが気になりピアノ前まで来たが既に遅かったのか居なかった。

「あっれぇ? 居ないじゃん」

「はぁはぁ…急に走んな!」

と息を切らしながら春の後ろに居た同学年のクリーム色の毛先が濃い茶色の髪をした春の双子の弟の秋は急にどこかへ走り始めた春を走って追いかけてきた。

「何?来たの? にしても遅い」

「遅いじゃねぇよ。 急に走って何事かと…」

と秋は若干キレ気味で言った。

「だってオレ様より才能がある人は許せないんだもん」

「そうかよ。(また始まった。恒例の才能潰しが」


第二音楽室

同時刻 、 茶髪の黒縁眼鏡の二年男子学生の拓真が机に突っ伏して考えていた。もう、自分には時間も選択する権利もない事は身に染みるほど分かっていた。先輩たちに任させれたこの部活をどうしても継続させたかった。だが、自分にはこの想いに応える事が出来ないし部を纏めるリーダーとしての器がまるでない。

だからと言ってこのまま黙って廃部させたくはない。

すると、トントンとノックが聞こえた。 新入部員か或いは…。

拓真は恐る恐る、ドアを開けると珍しいお客さんだった。

「せせせせ生徒会長!!!!なぜここに⁉︎ 」

可憐で清楚な服装の生徒会長。

平野 湊代はお知らせしに来た。

「たまにはと思いまして、お菓子も用意したんですわ。」

拓真は湊代を中へ案内した。

湊代は拓真の真向かいに座り、机の中央に持参して来た菓子を置く。

「宜しければ新入部員の方々と召し上がって欲しいの。」

「はぁ、お気持ちは嬉しいんですが…。」

拓真は現状の軽音学部について話した。 湊代はキョトンとしていた。

「なので…もう、催促されているのは分かってますが……ですが!」

湊代は高まった拓真を落ち着かせるように手を握りながら言う。

「私は廃部を勧める為にここに来たわけではありません。 だって、廃部して欲しいなんて一ミリとも思った事はありませんわ。」

拓真は落ち着かせながら言う。

「なら、なぜここに?」

湊代は握っていた手をそっと離し、一枚の提案書を拓真に提示する。

「これは?」

「一種の賭けですわ。」

拓真は提案書に目を通す。

「なるほど…。会長は思ったより悪知恵が働くのですね。」

湊代は悪戯した子供ぽく笑みを浮かべながら言う。

「策士と呼んで下さいまし。」

湊代は立ち上がり、去ろうとしたが。

「あっそうですわ。この話は呉々も

陽人には内密にして下さいまし。」

と湊代は右の人差し指を拓真の唇に軽く付けてから去って行った。

拓真は突然の生徒会長の訪問と未知で底知れぬ美しさに心が奪われかけた。提案書をもう一度、今度は深く読むが会長は見かけとは裏腹な大胆で強引な内容だ。

「これで継続できるなら…。」


一方、湊代は生徒会室で紅茶を啜っていた。補佐の理恵はファイルに纏めた資料に目を通していた。

「どうかしら、理恵? 」

理恵は眉間に皺を寄せてみていたひとみを癒すように瞼を深く、瞑ってからゆっくり、開いてから冷静に答える。

「内容自体は良いのですが…。

申しにくいのですが、少々強引ではありませんか? 」

意味をあるかのような笑みを浮かべながら言う。

「これでも結構頑張ったのよ。」

理恵は少々、呆れていた。

"トントン"とノックの音が聞こえた。

「どうぞ、入って下さい。」

ドアが開いたのと同時に演劇部、部長の立華 歩夢が入ってきた。

「失礼します。お話があるとお聞きしまして、お尋ね致しました。」

歩夢は丁寧に挨拶をする。

理恵は歩夢を席に案内する。

「どうぞ、お掛けなさってください。」

「お言葉に甘えて失礼します。」

歩夢は湊代の真向かいに座った。

「早速ですが、他にもない。

歩夢、貴方に折り入って協力して欲しい事がありますわ。」

理恵は歩夢に拓真とは別の提案書を歩夢に手渡した。

「拝見させて頂きます。」

「えぇ、どうぞ。気にいるといいわ。」

歩夢は書類に気になる点を見つけたらしく、質問する。

「申請書の事でしたか。 我々、演劇部に第一体育館の使用許可ありがとうございます。大変嬉しい事ですが…。」

歩夢は言いにくかったのか言葉づまった。察した湊代は悪戯ぽく言う。

「貴方にはいつも、お世話になっていますもの。ほんの気持ちですわ。

それで何が気に入らなかったのかしら?」

歩夢は意を決して言う。

「このゲリラライブとはなんでしょうか? 」

湊代は深刻そうに答える。

「それは私からのお願いよ。

この学校に廃部を出させたくないのよ。 だから…」

「俺に手伝って欲しいと言う事ですね。」

湊代は紅茶を啜ってから言う。

「えぇ、今回もお願いできるかしら。 演劇部のことは心配しなくても手は打ってあるわ。」

歩夢は納得したらしく承諾した。

「いいぜ、会長。」

「流石、裏生徒会長(究極のヘルプマン)」


その頃、第一音楽室では独占国家の王と裏であだ名が付けられている吹奏楽部の二年生 副部長の小野 陽斗が用事で遅れている部長に代わり、指揮をとっている。

「ハイ!金管部隊! 」

金管部隊と呼ばれているトランペット、トロンボーン、サックスフォーンを含む金管楽器だ。

金管部隊はそれぞれの楽器の音を出すがトランペットだけ音が低くズレている。

「おい!ソコのトランペット!ズレているぞ!ズゥダを意識!後で個別練習だ!」

陽斗はズレたトランペットを指揮棒で指し、嫌みたらしく指摘した。

そのトランペット吹き者は入りたての新入部員。挫けずに辞めないといいが。

「は、はいっ! 次までには直します!!!」

トランペット吹き者はぺこぺこと謝罪をする。周りの人達が「入りたてだから仕方ないよ」とか「練習すればなんとかなるって」と応援してくれている。…が一方で「陽斗の言い方キツくない?」とか「今日も独裁国家の国王は今日も健在で」ヒソヒソと三年を中心に陽斗の悪口を言っている人達もいた。




帰り道

透矢は幼なじみの雪夜と一緒にとぼとぼと帰っていた。

途中、透矢は今日あった事つまりは

軽音楽部が廃部してしまったことを話した。

「ってことがあってさー

ムカつくよなーあのハゲのオッサン」

「そうだな、少なからずどこの公立の教頭はそんなもんだろう」

冷静に答える雪夜に対して

「相変わらず、昔から雪兄は冷静だね」と思っていたことを吐いた。

「そうか?俺はそうは思わんが

部活はどうするんだ?

入る入ると張り切ってたが

とはいえ、廃部していた」

「うん、そうだね

でもオレ、入るよ。」

「廃部していたということは一からまた作り出さなくてはならないんだぞ」

「なければまた作り直せばいい、

今度こそ途中で諦めない!」

雪夜は少し儚げに答える

「そうか、部員集まるといいな。」

「雪兄は入…」

「断る!」

透矢は『入る?』と聞こうとする前に即答で清々しく断った。

「え!なんで!?」

「俺は妹を愛でるのに忙しい!!妹love!!」

雪夜には妹がいる

他の兄妹と比べ、妹のことを以上に愛している。

世間で言うところのシスコンだ。

「え、でも」

「誘うなら俺以外を誘え!」

「そ、そんな~!」


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