第38話 旭は四神の試練を受ける-後編-

 四神達が召喚され直されたのは、第1の試練が強制的に終了されてから30分経った頃だった。


『ここは……?……あぁ、白虎の攻撃で我らの顕現限界が来てしまったのか。召喚主よ、待たせたなーーーーって何をしている……?』


 朱雀は再び顕現したことに気がつき、俺が元の場所にいなかったのでレーナ達の方を見たのだが……。


「パパ……なんか画像増えてない?最後に確認したのがコ◯ケの時だけど……、まだそんなに日は経ってないよね?それなのになんでこんなにえっちな画像が増えているの……?」


「そうよ、お兄ちゃん。しかも画像の殆どが巨乳なのはどう言うことなの……?」


「ん?毎晩レーナ達を疲れさせるのもどうなのかなぁって思って、自家発電用に集めておいたんだよ。それに、リーア。巨乳だけじゃないぞ?しっかり小さいのも集めてる」


「いや、旭さん……。そこは弁解をするところなのでは……?まぁ、旭さんの好きなタイプを知ることができたのでよかったですが……」


 俺は【狂愛】を全開にしたレーナとリーアに体を揺さぶられていた。

 ルミアはレーナ達に揺さぶられながらも嬉しそうにしている俺を見て呆れていたが……その顔は朱に染まっている。


『我は……!我はこのような人間にダメージを与えられずに負けたのか……ッ!!』


 朱雀の後ろでは俺たちを見た白虎が悔しそうに叫んでいる。

 ……ダメージを与えられなかったのはまだわかるが……最後の言葉は聞き捨てならない。


「いやいや、白虎さんや。あれは俺自身の攻撃じゃないからまだ負けてないでしょうに。2


『…………なんだと!?』


 俺の言葉に白虎は驚きを隠せないようだ。

 他の四神達は……顔面蒼白で絶望した表情をしている。

 朱雀は震える声で俺に尋ねる。


『……召喚主よ……先程の白虎の攻撃を反射した事で主の実力は示されたと思うのだが……。ほ、本当に第2の試練を行うのか……?』


「……?何を言ってるんだ?初めに宣言したのはそっちだろう?あれは俺自身の攻撃じゃないから、俺の本当の実力を見せないとダメだろうに」


『そ……そうか……そうだな……。どうなるか予測してしまったが……分かった。召喚主の意見に従い、第2の試練を開始しよう』


 朱雀は何もかも諦めたような声色で第2の試練を行うことを告げる。

 ……何か悪いこと言ったかな?

 一度決めた事を守るのは大事な事だと思うんだけど。


「パパ……。白虎以外の四神達が絶望した表情をしている気がするんだけど……。よっぽど白虎が言った言葉に怒ってるんだね」


「お兄ちゃんは私達に害する存在を決して許さないからね。それにしても……お兄ちゃんの全力を見れるなら白虎に感謝かな。愛する人の本気は見ておきたいし」


 俺の横でレーナとリーアがそんな事を言っている。

 俺?2人の頭をひたすら撫でていますが?

 2人が2次元のエッチな画像に嫉妬しているのを見ると愛おしいんだもの。

 話しながら頭を撫でていても仕方ないよね。


『……そろそろいいだろうか?第2の試練では我らの内一体に攻撃を通すことが条件だ。範囲攻撃で攻撃してもいいが、個人的には1体に絞る事をお勧めする。……さて、如何様にする?』


 朱雀は若干怯えながら、第2の試練の内容を再度通達してくれる。

 朱雀は1体に絞った方がいいと言っていたが、もとより4体まとめて攻撃するつもりだったので、範囲攻撃一択なんだよなぁ。


「俺は範囲攻撃を使用するとしよう。そうした方が


 俺の言葉に白虎を除く四神が、殺意の篭った視線で白虎を睨みつける。

 まるでお前が余計な事を言わなければこんなことにならなかったのに!と言いたげな感じだ。

 白虎はそんな四神達の視線を受けて後ずさっていたが、何を思ったのか突然俺の方を向いて叫び始めた。


『お主の防御魔法が規格外なのは理解した!理解したが……それだけだ!あれほどの防御魔法を展開したなら魔力が足りんはず!第2の試練を突破できなければ、お主の女達を必ず贄にしてやる!どうする?魔力が回復するまで待ってやっても良いぞ!?』


 白虎はそんなことを早口で叫びながら俺を挑発してきた。

 ……実力は分かったが、最初に取った態度があるからか後に引けなくなった感じだな。

 ヤケクソになっている気がしなくもない。


「後に引けなくなったからって、さらにパパを挑発してどうするんだろ……」


「あれじゃない?白虎としてのプライド(笑)が許さなかったんじゃない?他の四神はお兄ちゃんが第2の試練をやるって言った時、死んだ魚のような目をしていたし」


「あれでは他の四神から睨まれても仕方ないですね。無駄に攻撃力が高いから実力差を簡単に認めたくはないのでしょう。……愚かですね」


 白虎の言葉にうちの女性陣が呆れた口調で話しあっている。

 俺もその通りだとは思うんだが……本人の目の前で話すのは……いいのか?

 ほら、白虎が怒りで顔を真っ赤にしている。


『うるさいぞ、小娘共!もとより第2の試練を突破したものが我らを従えるのに相応しいという条件なのだ!我はその条件に従ったのみ!』


 他の四神からも呆れた視線を受けていたが、それをスルーして叫んでいる白虎。

 ……まぁ、今更感はあるよな。

 俺はそんな白虎を尻目に朱雀に話しかける。


「白虎の話はまぁ置いておくとして、とりあえず第2の試練を開始してもらいたい。これ以上のやり取りは時間の無駄だし」


『……了解した。では、これより第2の試練を始める。準備が出来たら教えてくれ』


 さて、俺も準備を始めるとするかな。

 使う魔法を選ばないといけない。

 そんなことを考えていたのだが、レーナとリーアが話しかけてきた。


「パパ、第2の試練を攻略する魔法は決めたの?」


「お兄ちゃんならどの魔法でも攻撃が通りそうな気もするけど……どうするの?」


 どうやら2人とも俺がどんな魔法を使って試練を攻略するのか気になるらしい。

 上目遣いで見つめてくる2人の頭を撫でながら俺は考える。


「そうだなぁ……。どうせなら神霊魔法を使ってみたいんだよね。叡智さんに聞こうかなと考えていたところだよ」


「パパ、それならわたし達が使った魔法を使ってみない?」


 叡智さんに確認しようとしたらレーナからそんな提案があった。

 レーナとリーアが使った魔法というと……【終焉の極光】か。

 確か闇と光の複合魔法だったよな。

 多分俺にも使えるとは思うが……。


「【終焉の極光】なら問題はないと思うが……どうして使って欲しいんだ?」


「「パパ お兄ちゃんが使ったらどれだけの威力になるのか気になって」」


 2人は上目遣いのまま声を揃えて言った。

 そうかそうか……。最高でどれだけの威力が出るかみたいから四神相手に試してほしいと……。

 そんなこと言われたらそれを使わないわけにはいかないじゃないか!


「よし、わかった。2人のためにも【終焉の極光】を使って第2の試練を突破するよ」


「「うん!」」


 さて、使う魔法は決まった。

 俺は朱雀に話しかける。


「聞いていたと思うが、俺が使うのは【終焉の極光】だ。俺は詠唱が必要ないから、今のうちに防御魔法張っておいた方がいいと思うぞ?」


『人間が神霊魔法を行使するか……。そうでなくては我らの主人とは呼ばないから、問題はない。では、御言葉に甘えて防御を整えるとしよう。頑張って我らに攻撃を通すが良い。……フラグではないからな?』


 そう言って四神達は各々防御魔法を展開する。

 各々で展開しているのはそれで十分だと判断したからなのだろう。

 それが油断なのだと分からせてやらねば。


 俺はそう思って魔法の準備を始める。

 今回はあえて叡智さんの声を出すことで四神達に自らの力を示そうと思う。

 ちなみにレーナとリーアは俺の足に抱きつき、ルミアは照れながらも俺の背中に抱きついている。

 かなり動きづらいが、先ほどみたいに俺を無視してスマホの画像フォルダを見ているよりはマシなのでそのままにしておく。


 周囲に声が届くようになった叡智さんの無機質な音声が聞こえ始める。


「ーーーー【魔法威力向上】使用。更に【憤怒】と『悲哀】のスキルを使用開始……オールクリア。両スキルの効果により、旭の魔法攻撃は一時的に80000となります。……魔法発動準備完了」


 叡智さんの魔法発動準備に関する読み上げが終了する。

 レーナとリーアはその読み上げ内容について驚いていた。


「【叡智のサポート】ってこんな声なんだ……。って、パパの魔法攻撃が80000!?」


「前見た時が18000だったから……バフ効果だけで62000も上昇したっていうの!?お兄ちゃんの強さは底なしね……!」


「いえ、2人とも。他にも驚くところは別にありますよ!?第1の試練を突破するまで【悲哀】というスキルはありませんでした。恐らく第1の試練の時に私達が旭さんなら大丈夫だろうと、画像フォルダに夢中になっていたのが原因なのでは……!?」


「「…………!?」」


 ルミアの言葉に息を飲むレーナとリーア。

 ……まぁ、たしかにそれで【悲哀】を手に入れたけど、今抱きついてくれているから問題はないんだけどなぁ。

 そう考えていたのだが、レーナとリーアは違ったようで、大声で泣きながら俺に強く抱きついてきた。

 ルミアも背中に強く抱きついてくる。

 俺の両側にはロリっ娘の高い体温、背中には猫耳族の豊満な胸……ここが天国エデンなのだろう。

 そんな俺の内心を知る由もなく、2人は泣き続けている。


「パパぁ……!パパの試練に興味がないから画像フォルダを見ていたわけじゃないの!ふと見たら画像が増えていたから気になっただけなの!信じてぇっっ!」


「お兄ちゃん……ごめんなさいぃ!お兄ちゃんのことを嫌いになったわけではないから許してぇっっ!」


「旭さん……いくら旭さんが無敵とは言えども……不謹慎でした……。なのでどうか……どうか!許してくださいっ!」


 ルミアまでも泣きながら俺に謝っている。

 レーナとリーアの頭を撫でながら、ルミアに俺の前に来るように伝えて、抱きつかせる。

 胸の感触を前から感じながら、バフ効果について考える。

 それにしても魔法攻撃80000か……。

 バフ効果高すぎるんじゃないかと思わずにはいられない。


 俺はそんなことを考えつつ、四神達に声をかける。


「さて……俺の準備も終わった。覚悟はいいか?ーーーー【終焉の極光】!」


『ま、待て!魔法攻撃80000とか聞いてn』


 ーーーードズンッ!


 俺が魔法を唱えた瞬間に四神達に向かって、レーナ達が使った時より、何倍も強力な光が四神達を襲う。

 光は天高く伸びており、四神達がいる場所はガリガリと地面を削るような音が聞こえる。

 白虎が何かを言いかけていたが、光に遮られてしまった。


【終焉の極光】は10分間も照射し続けた。

 そして……光が消失した場所には……。


「パパ……また四神達の姿がないよ?」


「レーナ、これはお兄ちゃんの攻撃で四神達が消滅したってことよ。まぁ、あの威力なら当然だと思うけど」


 レーナの言う通り、四神達の姿はなかった。

 俺の攻撃で四神全員が顕現限界を超えるダメージを負ったらしい。


 俺は再び顕現され直すのを待つためにレーナ達の頭を撫で続けるのであった

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