【ホラー・高校/キミは絶対に騙される】俺が知ってるちょいと愉快な話 最終話

 ――で、そこに俺がいたってわけよ、この死神さまがね。


 あいつは歩道に投げ捨ててあった空き缶を踏んづけて転んだんだ。

 ほら、コーヒーとかに多いスチール缶。

 そいつですてんとひっくり返って、ブロックに頭ぶつけたんだね。


 即死だよ、即死。救急車が来た時にはご臨終ってね。

 慈悲深いだろ、俺も優しんだよね。

 他の奴なら、じわじわ殺りかねないよ。

 ああいう性質悪い魂にはね、ガツンとやらなきゃって奴が多いからさ。


 他の人からみりゃ、真面目な先生だって話だったからね、怖いことにさ。

 なんの暴露もされずに逝ったんだ、ほんと俺はいい死神だよね。

 俺の担当区域でよかったって、あいつにゃ感謝してもらわなくっちゃ。


 それに、ほら、見てごらん。この鏡に映ってるのが、ターゲットが恋してた城山みどりで、こっちの凛々しい顔した男が内田なんだけどさ。この二人、あのあと大学も同じところに行って、そのあとも付き合いがつづいて、なんと、めでたく来月結婚するんだとさ。


 もっと先の未来も見えるけど、悪くないよ。幸せな家庭ってやつだね。

 二人とも長生きするよ。俺の担当区域だから、わかるんだよ。


 やっぱり、困難は愛を強めるね。二人ともおっかない思いしただろ、特に女の方はトラウマもんよ。そこを男が逃げずに支えたってんだから、もう間違いないね。下手に別れたら罰が当たるってもんよ。神さまじゃなくて死神さまの思し召しさ。


 いやー、あの男もキューピッドになったわけか。

 誰が何の役に立つかわからないってのが人間の面白いところだよ。


 さて、どうだい。

 俺たち死神の仕事も、そう悪くないだろ?

 だから、そう暗い顔しなさんな。


 嫌われたって良い。

 あんたが引っ張ってきた魂が、誰かを救うことだってあるんだよ。

 俺がやったようにね。ほら、元気だしなよ、愉快な話だったろ?


 こんな面白い仕事、他にないんだからさ。

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