【現代ドラマ/コメディ・高校生】愛LOVEチョコレートマン 参上☆
聞いてくれ。今日はバレンタインだろ?
そんな恋人たちの日にだ。
もし、己の机の中に何かあった場合。
それも、四角い箱でどうやらチョコレートなんじゃないかなと。
そう、思われるものが入っていた場合だ。
これは……来たな。
って思うわけじゃんか。
けど、俺の浮かれ顔に冷や水を浴びせた奴がいる。
斎藤だ。奴は言った。
「お前、これチョコレートマンのやつじゃね?」
と。
チョコレートマン。
それはバレンタインにひとつもチョコをもらえず、その悲しみと嫉妬のあまり憤死したという悲劇の男が作り出した都市伝説である。
ただ、死んだ、というだけなら、俺は彼に同情する。
しかし、このチョコレートマンは恨みつらみを持って死んだ男だ。
大人しく成仏しやしない。
彼は死後、大鎌を背負う愛の死神・チョコレートマンとなり、バレンタインにチョコレートをもらった男の前に現れるようになった。そして、背に持つ巨大鎌で執拗なまでにターゲットを追い回し、最後はその巨大鎌を使って、ターゲットを襲撃、殺害するのだ。
そんな都市伝説がまことしやかに噂されている我が高校なわけだが。
それが、今年。新たなチョコレートマン情報が加えられた。
なんと、newチョコレートマン誕生である。
無差別の殺戮をやめ、ターゲットを絞ることにしたというのだ。
もし、見るからに手作り本命チョコと思われる赤い箱をバレンタインに贈られた君は気を付けたまえ。そいつがnewチョコレートマンのターゲットにされた証だ。疑うのなら、赤い箱を裏返してみよ。裏には目印として、こう書かれてあるはずだ。
『愛LOVEチョコレートマン』
俺は手にした赤い箱を裏返した。
斎藤はすでにこの文字を見ていたのだろう。
愛LOVEチョコレートマン。
二度読んだ。
愛LOVEチョコレートマン。
ふっ。いたずらか。
俺はそう思った。いたずらか。
うん、いたずらされたと思うと悲しい。
けど、いたずらはいたずらだ。
されど、軽う笑う俺に、非道な斎藤はこんなことを言ったのだ。
「どうすんだよ、お前。それ持ってるとチョコレートマンが来るぞ」
来るわけないだろ。あんな都市伝説を信じているのか。
高校生にもなってバカらしい。万が一にも女子に聞かれたら「これだから男子はさぁ」とため息&蔑みの視線を頂戴することになるぞ。
もちろん、俺がこんな幼稚なことを深刻に取り合うはずがない。
そう、そんなわけなかったのだが。
斎藤のなんともいえない同情の眼差しを浴び。
それが余りにもしつこいものだから。
この冷静沈着な大人の俺も、うっかり気が変わってしまったのだ。
もしかしたら……
いや、もしかしたらも、何もあったもんじゃないがな。
それでも、多少は気分悪いわけよ。
たとえ、いたずらだとしてもね。
それに、重要なことだが、こんな陰湿ないたずらを黙って見過ごすほど、俺は腐ったやつじゃない。断じてない。
そういうわけで、俺はクラス一のモテ男の机に、この『愛LOVEチョコレートマンチョコ』の箱を押しこんでやった。こいつは俺が密かに恋心を抱いている倉橋さんと最近付き合い始めたという噂があったりなかったりする男でもある。くらえ、チョコレートマンによる正義の鉄槌だ。ハッハッハッ。
そうして、俺は満足してクラスのモテ男がこの『愛LOVEチョコレートマンチョコ』を見つけ、動揺するのを楽しみに待っていた。
しかし。しかしだ、諸君。
奴はこの日、学校を休んだ。そして、翌日も。
もしかして……
まさか……
奴の元に、大鎌を持ったチョコレートマンが……?
そ、そんな……、待ってくれ。俺はただ……
後日。
高校では、インフルエンザが大流行した。
俺も例にもれず感染する。
クラスで唯一感染を免れたのは、斎藤。お前だけだな。
(おしまい)
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます