ひとりふたり
ちゅけ
第1話
カップラーメン、野菜ジュース、プリン。
スーパーのかごの中から取り出されるものは、昨日のものとはまるで違う。
「お客様?」
声をかけられて、慌てて支払いを済ませる。ひとがたロボットは、最新の口紅をギラつかせて微笑んだ。
日本が全て海に沈んだとき、私は火星ではなく海中ホテルに住むことを選んだ。死んだあとの骨は役所が月に打ち上げてくれるそうだ。私の父と母も、何年か前に月へ向かった。とかく地球にはスペースがないのだ。
それなのに。
私の部屋には空白が目立った。昨日までは狭い狭いと思っていたのに、居なくなれば呆気なかった。
居なくなったんじゃない。私が追い出したのだ。
カップラーメンをすすり、健康に気をつかうふりをして野菜ジュースを飲んだ。プリンは風呂上がりだ。
「なんて気楽なんだろう」
窓の外に見える恋人だったものは、ネクタイに繋がれてうっとりと微笑んでいた。
ひとりふたり ちゅけ @chuke
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