灰
ちゅけ
第1話
これは私が小学校四年生のときの体験です。
当時から人見知りの激しかった私を祖母はとても心配しており、夏休みには必ず遊びに来るようにと葉書を寄越すほどでした。
その日は海に行こうということで、前日から水着を枕元にたたんでおいたり、海水はしょっぱいかと祖母にきいたり、子どもながらに楽しさを演出しておりました。しかし運悪く雨が降り、引っ込みがつかない祖母が海へ連れ出してくれたのは夕刻でした。泳げはしないものの、ただ波が押したり引いたりする海の残骸を見ているのは心の休まるものでした。
しかし。
私の左側、三メートルほどでしょうか。真っ黒の人影がずっとずっと私を見ているのには気付いていました。
動いたら
気付かれたら
死んでしまう。
黒い人影は周りになにかヒラヒラと舞うものがありました。
たぶん、蛾です。
祖母が私に帰るよと声をかけたあと、ポケットからなにか取り出しました。そしてそれを私の頭と自分の頭にふりかけました。
視界の端から、人影が消えたのがわかりました。
「海にはいろいろ流れ着く。灰を持ってるといいよ。かえるから」
ドコヘ?
灰 ちゅけ @chuke
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
関連小説
背負う/ちゅけ
★3 エッセイ・ノンフィクション 完結済 1話
毛皮/ちゅけ
★3 エッセイ・ノンフィクション 完結済 1話
れいのうりよくしや/ちゅけ
★4 エッセイ・ノンフィクション 完結済 1話
思い入れ/ちゅけ
★0 エッセイ・ノンフィクション 完結済 1話
散髪/ちゅけ
★2 エッセイ・ノンフィクション 完結済 1話
そこだけじゃない/ちゅけ
★0 エッセイ・ノンフィクション 完結済 1話
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます