第5話 38度5分
「ねぇ。わたしが『好き』って、言ったらどうする?」
数秒の沈黙が続いた。
「……そういうのは、ちゃんと言ってから答えるもんだろ。それより心配したんだぞ」
彼は照れ隠しの様に早口で答えた。
「『好き』わたしは、崇裕が好き!」
彼はベッドに腰かけたかと思うと、照れ笑いながら頭を撫で始めた。彼の大きな手が安心出来て心地良い。
「俺も言い方がズルかったな。俺の方がお前の事大好きだ。突然、倒れた。って、聞いて……部活サボっちった」
「え? もうすぐ大事な試合でしょ? すぐに戻りなよ。わたしは、ただの貧血で大丈夫だから」
彼は抱きしめると、耳元で囁いた。
彼の低い声と香水の匂いが卑怯だ。
「バ~カ。こんなお前見てたら……俺が大丈夫じゃないの」
「ふふ。崇裕の方がバカじゃん」
二人の幸せそうな小さい笑い声が響いた。
ってか、保健室だぞ。カーテン越しに熱で死にそうな私が寝てるんだけど、特別にナレーションまでしてやってんだ!
ちくしょー 幸せにな!
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