第21話 どうぞ。これは結のものだよ。

 わたしが指差した輪投げの景品のおもちゃの指輪に、まっすぐかっちゃんが投げた輪っかが飛んでいく。

 とれますように。

 わたしは心からお願いしてた。

 かっちゃんに輪投げを成功してもらいたい気持ち。

 かっちゃんからおもちゃだけど指輪をもらいたいなって、わたしの気持ち。


「やったあっ!」

「やったあ」


 かっちゃんが投げた輪投げの輪っかは私が欲しいって言った指輪を包むようにしっかり向かって落ちた。


「おめでとう。ほら景品だよ」

「ありがとうございま〜す」


 ニコニコした輪投げの屋台のおじさんから、かっちゃんがおもちゃの指輪を受け取った。


「はい、どうぞ。取れたんだよ、俺すごいよね? ゆいのものだよ。つけてみる?」

「うんっ! かっちゃん、すごいよ。……ありがとう」


 かっちゃんがわたしの左手をすくい上げるようにしてから、きゅっと掴んだ。


 かっちゃんの手に触れられて、わたしはすっごく恥ずかしくなってきちゃった。


 息が止まりそうなぐらいドキドキしてきて、顔が熱くなっちゃう。


 かっちゃんがわたしの左手の小指にはめてくれたら、ピッタリだった。


 嬉しい!

 ……すごく嬉しい。


「ありがとっ! かっちゃん。だいじにするね」


 かっちゃんが照れて笑う。


「えー。しかし結はそんなんで良かったの〜? 俺もう一回輪投げやろうかな〜」


 ありがとう。

 かっちゃん。

 わたしね、すごく嬉しいの。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る