第17話 ふたりきり

 神社の夏祭り。

 お囃子はやしと太鼓に笛の音が響いてる。


 神社の参道や境内に並ぶ縁日の屋台から威勢のいいおじさんやおばさんの声がする。


「美味しいよ〜」

「おすすめ、焼きたてだよ〜」

「大盛りだよ〜」


 甘いにおいがする。

 綿あめかな? りんご飴?

 焼きそばやタコ焼きの香ばしいソースの焼ける音。


 たくさんの人たちが来てる。

 にこにこ笑いながら

 金魚すくいをしたりしている。


 ずっと、わたしの胸はドキドキしっぱなしだ。

 

 だって……、ふたりきりなんだもん。


 かっちゃんとふたりきりで夏祭りを過ごすことになったから、あー、だめだ、ドキドキが止まらないの。


 わたしは顔が熱くなって、火照ってきちゃう。

 

「しっかし、お姉ちゃんもさあ、薄情だよなあ。急にお姉ちゃんのクラスの奴が『一緒に夏祭りに行こう』って迎えに来たんだよさっき。で、ゆいのことは任せたって言って、先にお祭りに行っちゃうし」


 かっちゃんは甚平じんべいを着て来てた。

 足にはいつもの青いスニーカーだけど。


 なんだろう……?

 かっちゃんがいつにも増して、さらにすごく格好良く見える。


「え? クラスの奴って?」


 かっちゃんはわたしの右側を歩いてる。

 わたしは視線が恥ずかしくて、合わせられなくて下を向きながら歩く。


 神社の長い回廊かいろうに、ポツンポツンと置かれた灯籠とうろうのホワっとともっている光が、幻想的に揺れていたんだ。

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