両親がめだかになる夢。
猫店。
第1話
どなたでも自分の好きな生き物に一時的に変身して体験できる素敵なパーク
私の父と母は
メダカになる予定らしい
おそらく父の希望だろう
父は生前からメダカが大好きで
よくメダカのお世話を楽しそうにしていた
「後日見においでね」
と、父が言っていたので
私はパークに向かった
棚の水槽や、入れ物には
さまざまな種類の生き物が並んでいた
お花なんかもあったと思う
これかな?
うすいシャーレ(ペトリ皿ともいう)という理科室にある入れ物のようなものに
2人(2匹)一緒に入っていて他の変身体験の人たちなのか
他の本物のメダカなのか
何匹か一緒に棚に飾られていた
両親の入れ物には○○(私の両親の苗字)夫妻。
と、書いた付箋のような今にも剥がれそうな紙が貼ってあった
記載が両親の苗字だけだったことから
このシャーレのようなものには
変身した人間は私の両親だけが泳いでいて
ほかのめだかはおそらく本物のめだかなのだろうと思った
泳いでいる父と母はめだかになれて幸せそうなのが私もうれしかった
しかし、この容器のどのメダカが私の両親で
どのメダカが本物のメダカなのか区別はつかなかった
つまり幸せそうな というのは
私の想像である
♦
私はその棚の前を通過しようとしていた
棚というよりはちゃちなラックだ
このテーマパーク
棚がこんなにちゃちでいいのだろうか
少し揺れたくらいで倒れそうだ
そのうえいまにも剥がれそうな付箋の紙
ここの管理体制は充分なんだろうか
♦
そんなことを考えながら
別の変身した人たちのコーナーを見て回っていた
ここは見学も自由なのだ。
♦
5歳か6歳くらいの男の子がなにかを手に持って嬉しそうに走っている
嗚呼、走り回って棚のなにやらにぶつからないでおくれよ
と、思いながら私は男の子の手元を見た
それは、もちろん私の両親の名前の付箋がついたメダカの容器だった
こらこらなにやってんだよ
と、言うより早く
その男の子は勢いよく転んだ
♦
水とめだか(両親)が地面にこぼれた
両親がめだかになる夢。 猫店。 @nekot_en
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