待ち人来たる

僕の彼女は運命という言葉が大好きだ。


朝の星座占いから、紅茶占い、タロットカード...

ありとあらゆる手段で運命を決める。


そんな僕は彼女に運命を共にしようと、プロポーズを申し込むつもりだ。

どうせ彼女は運命的な出会いなのか占うべく、近くの神社でおみくじを買おうと言い出すだろう。


僕は下準備のために、なんども何度も引き直し、「待ち人 来たる」をゲットし彼女の引いたおみくじとすり替えようという寸法だ。


「僕と結婚してください。」

「嬉しい!早速運命を占いたいわ!あの神社でおみくじ引こう!」

計画通りに事が進んでしまった。

彼女がジャラジャラとおみくじ筒をかき回し、選ばれた番号を読み上げた。

「もらってくるよ」と取ってくるふりをして用意していたものを準備する。

未開封のものをわざわざ準備した甲斐があった。


「ちょっと先に見させて」と彼女は後ろを向き開くと、ゆっくりと振り向いた。

「今回はごめんなさい。あなたとまではこれまでね。」

と持っていたおみくじを見せた。


待ち人 来らず さわりあり


開いた口が塞がらない僕におみくじを押し付けて彼女は去っていった。

彼女の後ろ姿を目で追っていると何かを落とした。

慌てて拾うと未開封のおみくじだった。


彼女は自分で運命を決めていたのだ。

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