コーヒー


とある喫茶店では痒いところに手が届くサービスを売りにしていた。

コーヒーは飲みやすい温度に、砂糖は適量に、サンドイッチは新鮮な風味と美食家を唸らせる味だった。

なかでも喫茶店と言いつつ豊富なメニューの方が人気があった。カレーはスパイスが効いていて刺激的な味。ハンバーグは肉汁が飛び出て食欲をそそる。

集客は裏のコンビニに負けないほどだ。


中でもお客さんに人気だったのが、料理を注文すると作っている間にコーヒーをご馳走してくれるのだ。


今日はそんな喫茶店でコーヒーLサイズをテイクアウトで注文した。

すると

「すいません。コーヒーのストックがちょうど切れてしまって...。」

申し訳なさそうに申し出る店員。

「あぁ、構わないよ。待ってるから。」

たちまち笑顔になった。

「ではお待ちの間にコーヒー1杯無料でサービスいたしますね。」

とコーヒーを渡された。

不思議に思い、

「なんでストックが切れているのに、コーヒーを出せるのかい?」

と尋ねた。

「あ、これは、お待ちのコーヒーなので。」

「じゃあ、待つ用のコーヒーをLサイズでくれ。」

店員は渋々コーヒーを渡してきた。

コーヒーを出せるのに待たせるなんて!

と思いつつ、一口飲むと、いつもの味である。

よかった。今日はいきつけの美味しいケーキ買ってきたのだ。やはり甘いものにはコーヒーが合うと思う。


ケーキを口に含むとマズイ。なんでこんな味になった。いやコーヒーか?


急いで喫茶店に戻ると、先ほどの店員が上司らしき人に怒られていた。


「ダメだよ。料理を待つ用のコーヒーは舌が痺れて料理のまずさをわからなくしてるんだから。簡単に渡しちゃダメだよ。」

よくみるとコンビニの裏と喫茶店が繋がっていた。

もしかして廃棄したものを食べさせられていたのかもしれない。

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