動き出す強者共

 パンドラズ・アクターとデミウルゴスによって、玉座の間から退出した子供たちはレメゲトンで困惑の言葉を連ねていた。

「モモンガ様・・・一体何があったでありんすか?」

第一・第二・第三階層守護者シャルティア・ブラッドフォールン。

「フム、アレホドノカンジョウヲワレラシモベタチダケガイルトコロデ、トロサレルノハハジメテノハズ」

第5階層守護者コキュートス。

「うー、モモンガ様の為になにもできなかったよ~。」

「お、お姉ちゃん、大丈夫だよデミウルゴスさんと、パンドラズ・アクターさんがついているし。」

第六階層守護者、アウラ・ベラ・フィオーラ、マーレ・ベロ・フィオーレ

「モモンガ様・・・」

第八階層守護者ヴィクティムを抱きつつそう言葉を零すのはルベド。

 扉を見つめる執事は何を想うのか。

 第十階層ナザリック城で至高の四十一人に仕えるセバス・チャン。

 悪魔と天使が刻まれた荘厳な扉の前で、式典に出席していた子供たちは、それぞれの思いを持ち考えを連ねていたが、その心が向かうところはただ一つ、モモンガへと向けられるものだった。

 暫くすると玉座の間へと繋がる扉が開く、そこにはナザリックに所属する者たちの上に君臨する、絶対支配者が玉座に座していた。

 そんな姿を見たレメゲトンにて待機していた子供たちは、安堵の吐息を漏らすのであった。

「皆、もう大丈夫です。ですが、少々厄介な状態になっています。階層守護者とルベド、セバスとプレイアデス以外の僕は、一度それぞれの担当階層に戻り警戒を厳にして待機していてください。」

「デミウルゴス!」

「おっと、シャルティア、質問はモモンガ様から状況の説明がなされてからでお願いするよ?」

 この後指示された通りに、子供たちは急ぎ自身の所属する階層へと戻り、異常事態を告げたデミウルゴスの言葉通りに警戒を強め待機し、シャルティア・コキュートス・アウラ・マーレ・ヴィクティム・ルベド・セバスとプレイアデスは、デミウルゴスに導かれる形で、モモンガとその近くに侍るアルベドとパンドラズ・アクターの下へと歩みを進め、傅き頭を垂れたのであった。

「アルベド。」

「皆の者、頭を上げモモンガ様のご威光をその全身でお受けなさい。」

 ・・・、これ、毎回やるの?

「うむ、皆の者先はすまなかったな。」

「モモンガ様・・・。」

「あー、そうだったなアルベド、ついつい癖でな。」

 でもなー、この子たちとはこんな関係で終わらせたくない。

 魔王と配下とか、そんな俺たちが造った設定じゃなく、これから一緒に生きて・・・、そう一緒に築き上げていこう。


 玉座の左右には、私とパンドラズ・アクターが控え、玉座より数段低い床に階層守護者各位と、その後ろにセバスとプレイアデスが傅いている。

「ふむ、まずはどこから話そうか、そうだな時間が惜しいか・・・、我らの子供達よ!現在、このナザリックは不可思議な現象に巻き込まれた可能性がある。」

 モモンガ様はそのように切り出し、現状把握できていることを、玉座の間に侍る者たちに説明される。

 地表のグレンデラ軍により、上空がヘルヘイムでは非常に稀な星空が望めたと、しかし、その星空を見た者たちは、見知らぬ星の配置だったことを。

 また、自分を含めた複数人のレベルがある時を境にして、成長限界を突破して上がったことを。

 そして、・・・モモンガ様の精神の変調を。

 この状況から、世界の理が今までと違うという事が判断できること、故にこれは大規模な転移事故にこのナザリックとグレンデラが巻き込まれ、見知らぬ世界へと飛ばされてしまったのではないかと。

 ついては、現状のナザリックの状態を把握すべく、ここにいるもので、しかと状況を調べて欲しいことを。

 各階層守護者はそれぞれの担当階層に戻り、自身の配下を使い速やかに行動に移るべしと。

 セバス・チャンには第四階層の確認を。

 プレイアデスのナーベラル・ガンマとソリュシャン・イプシロンとユリ・アルファには第九階層を、

 同じくプレイアデスの、シズ・デルタとエントマ・ヴァシリッサ・ゼータと、オーレオール・オメガに第十階層の確認を指示する。

 そして、パンドラズ・アクターには宝物殿の確認と並行して、安置されている各種アイテムの調査も命じられる。

 最後に私にはしばらくの間、ナザリックの執務を中断し、護衛をしろと御命じてくださりました。


 俺の言葉を神妙に聞いてくれた子供たちをしっかりと見る。そう、もう見失わないないように。

「時間が惜しい、ここにいるものにはこれを渡しておこう。」

 人数分の、リング・オブ・アインズ・ウール・ゴウンを取り出しパンドラに手渡す。

「パンドラズ・アクターよ、これを皆に。」

 ん?みんなの反応が・・・。

 指輪を受け取りに近くに寄ったパンドラが小声で。

「父上、この指輪は至高の御方々しか着けていませんでしたので。」

あー、そういう。

「ふむ、これ以降、主だったものには追って渡していく予定だ。遠慮なく受け取ると良い。これは、今後、効率を上げるための処置だ。」

「モモンガ様、喜んで拝領いたします。」

 アルベドはー、うん、そこだよね!

 シャルティアもかー、アウラもだねー、・・・マーレモカ。

 男性陣は右手人差し指だな・・・ヨカッタ。

 さて、プレイアデスも、全員そこなんだね。

「父上、」

 俺は指輪を配り終えたパンドラが戻り、声を掛けて来てから、彼らに行動を促す。魔王っぽく。

「うむ、では、皆の忠勤を期待する!」

 この場に居るみんなの声が玉座の間に木霊する。

「はっ!御心の侭に!」

 その言葉と共に、それぞれ指示した階層に転移していった。

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