困惑の支配者
悟はモモンガ
次の瞬間、漆黒のアカデミックガウンに包まれた体が光り出す。
「あ、なんか落ち着く・・・。」
万雷の喝采の声が響く、中には目をはらし涙を流すものもいる、種族的特徴で涙を流せないもの達の中にもだ。
なぜか、モモンガにはそれが分かった。
そんなモモンガの横に立つアルベドは、一瞬とは言え自らが仕え愛する主人が、困惑の感情を持ったことを見逃さなかった。
「モモンガ様、どうかなさいましたか?」
「少し待って。」
この地を支配する絶対なる支配者から漏れ出たのは、か細い声だった。
え!?なにがどうなってるの?
って、えー、やばい絶望のオーラが!
絶対支配者から急に漏れ出すのは濃密な死の気配。
モモンガ様!
アルベドの胸中ではモモンガの異変に対しての心配もあるが、モモンガの力の強大さに耐えられない僕が、ここにいることに恐怖した。
そして、その事でモモンガの心が傷ついてしまう事に。
いけない!
「モ、モモンガ様、不敬を承知でお願いいたします。どうか、お力を御鎮め下さい。」
「あ、ごめんなさい、えー、アルベドさん。」
「いえ、モモンガ様に意見してしまった事お詫び申し上げます。」
場内は静まり返っていた。絶望のオーラの暴走が、一瞬であった為大事に至ってはいないが、この状況を見てモモンガは立ち上がり腰を折り、
「みんな、ごめんなさい。」
と、平に謝る姿勢を見せる。これに驚く子供たち。
いち早くモモンガの異変に気付いたアルベドだけが、この異常事態に対応できていた。
「モモンガ様、我ら下賤の僕たち・・・」
やってしまった・・・、危ない所だった。あのまま絶望のオーラを出していたら・・・、これは謝って済む問題じゃないけど、まずは姿勢を態度で示さないとな。処分は後でアルベドさんにでも決めてもらおう。
まずは立ち上がって腰を折る。
「みんな、ごめんなさい。」
頭を下げたまま周囲の音を確認する。
子供たちは、何も反応していない・・・、そうだよな・・・こんな事したら。
「モモンガ様、我ら下賤の」
・・・、
「アルベド・・・、私の友人が生み出した貴方が、そんなことを言うのは悲しいですよ?」
あ、つい感情に任せて・・・、何をやってるんだ。今は俺が謝っている所だろ。
「も、申し訳ありませんモモンガ様!」
俺の目の前には、さっきの俺以上に謝る姿勢を示す
酷い男だな俺は、こんな大勢の前で女性を土下座させるまでに追いつめてしまうなんて。
「アルベドさん・・・、お願いします。そんなことしないでください。」
「し、しかし・・・。」
「あー、私の言い方がいけませんでしたね。ですから、そんなに怖がらないでください。それに・・・、友人の子供の様な貴方をこんなに追い詰めてしまったのは私です。悪いのは私だけですよ。」
玉座の間にいる僕たちはこの状況についていけず、ただ黙するのみであったが、ここで一人の存在が動き出す。
「父上!」
ナザリック第十階層宝物殿領域守護者、パンドラズ・アクター。
彼はモモンガによって生み出された言わば息子の様な存在であり、このナザリック内の子供の中で、智謀が優れたものとして生み出された存在である。
「この場、このパンドラズ・アクターにお任せいただけないでしょうか?」
「あ、あー、パンドラか。任せる。」
「はっ、では、皆様申し訳ありませんが、このままでは話を進めることもままなりません。父上とアルベド殿、後はデミウルゴス殿だけ残して一旦この場を辞して戴けないでしょうか。」
これを受け第七階層守護者デミウルゴスもまた、己の感情を総動員して頭を切り替え事態収拾に動き出す。
「そうだね、パンドラズ・アクターの言う通り、ここは一旦私たちに任せてくれたまえ。」
父上一体何があったのですか?
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