ヘロヘロさん

 部屋の中央に漆黒の輝きを放つ巨大な円卓が置かれ、四十一人分の絢爛豪華な椅子が並べられたここは、ナザリック城内にある円卓の間。

 嘗この場には、一人の指導者と四十人の絶対者が集まり、幾度となく会議を行っていたが、それも過去の話。

 今は二体の異形の者が、愚痴を零しながら歓談するのみであった。


「いや~、ヘロヘロさんお忙しいのに来てくれたんですね!」

「ははっ、まーこの忙しさは自分で招いたものなんですけどねー。」

 そうリアルの事情を交えて話すその様は、彼らの見た目に大変そぐわないものだった。

 方やこの世界に数多ある、遺産、聖遺物、神話物を溶かし、幾人ものプレイヤーを泣かしてきた、装備ブレイカーたるエルダー・ブラック・ウーズ。

 相対するは、このユグドラシルにある数多ある世界の一つを支配している、真白き玉体を持つオーバーロード。

「最近はそんなにお忙しかったんですか?」

「いやー、身から出た錆というか、自分で言いだしたことなんですけどね。まさか、ここまで難儀するとは思っていなくて。」

「あー、そういうのありますよね。楽勝っと思っていたら、想定外の事が起こる事。」

「え~、そうなんですよ。しかも、今回のは自分から言い出したことで起こったので、責任も自分で負わないといけない状況だったんで。」

「うわー、想像しただけで胃が、あ、私胃が無いんですけども!」

「フフっ、それ何回聞いたと思ってるんですか?モモンガさん。」

 疲れたと言いつつも、話を積み重ねる世界有数の粘体ウーズにも、限界が訪れようとしていた。

「う~、モモンガさんすいません。私流石にきつくなってきたのでここらでアウトします。」

 その胸中には一つの思いがあった、最後は一緒に居られませんけど、皆からのプレゼント喜んでくれるかな?と。

 そう、彼が今疲れているのは、忙しい仕事の合間を縫ってとある仕込みをしていたためであった。

「はい、ヘロヘロさん、ユグドラシルサービス終了記念のオフ会でお会いしましょう。」

「はい、また会いまほう。」

 最後に欠伸をしながら別れの挨拶を零しつつ、ゲームをログアウトしようとしたところでハタと思うヘロヘロ。

「あ、そうそう、ここから徒歩で玉座の間に行ってください。面白いものを用意したので。で、出来れば後で動画送ってくださいねー。ではー。」

そう言いつつ、ギルド「アインズ・ウール・ゴウン」のメンバー、至高の四十一人の一人ヘロヘロは、


この世界から姿を消した。

 

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