第18話 宣伝をお願いします
「いいですよ。……あ、そうだ。じゃあ宣伝してくれればタダであげちゃいます」
ほら、いくら良い物でも誰にも知られなかったら売れないわけだから。
口コミで広がるのを待ってもいいんだけど、それじゃあおいしいお肉を食べられるのがいつになるか分からない。
私は
でもって、評判になる頃には私の錬金の腕も上がって、最高級ポーションも作れるようになってる予定なの。
そうしたらそれを売っておいしいお肉が買えるんじゃない?
私って、賢~い!
「いや、それは……。一度、君の親に会って話をしたいんだが、どうだろうか」
「親ですか?」
なんでいきなり、親が出てくるの?
「これほどの腕だ。きっと君の親御さんも高名な錬金術師なんだろう。勝手に話をまとめてしまうと、親御さんも困るはずだ」
「いないです」
「いない?」
「はい。私の家族は……このコッコさんとロボとオコジョさんだけなので」
「オコジョさんというのは?」
ジークさんに聞かれて返答に困る。
だってオコジョさんはオコジョさんなんだもん。
人ではないけど、動物……なのかな。
この世界の動物って、喋るんだろうか。
「なんだろう……。保護者?」
私の『導き手』なんだから、保護者でいいんだよね。
あ、でもそれを言うなら――
「コッコさんも保護者かも」
なんといっても『守り手』だしね。キング・スネークも瞬殺しちゃうほどの強さだもん。頼もしいよね。
「このニワトリが!?」
ジークさんがそう言った途端、コッコさんが三白眼でギロリと睨んだ。
そうだよねぇ。一見ただの普通のニワトリに見えるよね。
っていうか、コッコさんがこの世界のニワトリの標準じゃなくて良かった。きっと普通のニワトリもいるんだね。
それならいつか、トリのから揚げも食べれる日が来るはず!
「あ、いや。失言だった。申し訳ない。確かにこの森を平然と歩けるのだから、強いに決まっている」
ジークさんがそう言って頭を下げた。……コッコさんに。
おおう。さすがコッコさん。冒険者やってるほどの人にも頭を下げさせるとは、さすがだ。
なんだかロボもコッコさんに怯えていて、しっぽが股の間に入ってしまっている。
最近ではコッコさんに慣れてきてたのに、やっぱり教育的指導を受けた記憶で苦手意識がついちゃってるのかなぁ。
腰も抜けちゃってるのか、お座りした姿勢でズリズリと後ろに下がっていた。
「なるほど。保護者の方と住んでいるのか」
少し顔色の悪いジークさんは、保護者がいるということで納得してくれたみたいだった。
まあ保護者といっても、全員もふもふだけど。
「それに、もう十六歳ですし。何でもかんでも保護者に聞かなくても大丈夫です」
多分、オコジョさんも「メイがそう決めたんならいいよ」って言ってくれると思うし、コッコさんも反対してないっぽいから、ジークさんに薬をあげて宣伝してもらうのはOKだと思う。
久しぶりに人間と会って、私のテンションがちょっと上がってる気がするけど、仕方ないよね。
もふもふは好きだけど、そろそろ他の人とも話がしたかったんだもん。
えーっと、こういうのを飛んで火にいる夏の虫って言うんだっけ?
犬も歩けば棒に当たる?
……とにかく。
せっかく異世界に来たんだから、箱庭で引きこもってばかりじゃなくて、異世界見物をしたい!
「成人してるのか!?」
ぎょっとしたように言われて、首を傾げる。
んん? この世界の成人って早いの?
「どうなんでしょう?」
「十六歳ならば成人しているだろう。十五で成人するのだからな」
「じゃあ成人してます」
「……どうも調子が狂うな」
どうもすみません。
そもそも私ってば異世界人だから、この世界のことを全然知らないんですよ~。
「あ、そういえば、毒にやられた人って大丈夫ですか?」
そうそう、すっかり忘れてたけど、私が作った毒消しは効いたのかな。
人に使ったのは初めてだから、どうなったのか知りたい。
「おそらく君の作った解毒薬が効いたと思うが……。一緒に見に行くか?」
「いいんですか?」
「ああ。クラウドも、命の恩人に礼を言いたいだろう」
「じゃあ行きます」
ジークさんの後について、茂みをかきわけかきわけ進む。
草とか枝がたくさんあったりすると、ジークさんが剣で歩きやすいように薙ぎ払ってくれる。
おかげで私も歩きやすい。
しばらく行くと、黒い頭が見えた。さっきのアレクさんだ。
そのアレクさんが抱き起こしているのがクラウドさんかなぁ。水色の髪の穏やかそうな人だ。
まだ顔色は悪いけど、命に別状はなさそう。
良かった。薬が効いたんだね。
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