DX3rd小説風リプレイ「Demolish an illusion」

深海月

導入

boy meet girl?

 頭が追いつかないほど残酷な出来事は

 いつも突然起こるものだ。


 大好きなお母さんが居なくなったり


 大人しいと思っていたクラスの女の子が喫煙所へ向かっていたり


 謎の爆発に巻き込まれて命を落としたり。



――――――


「とってこようかなとは言ってみたけど……」


  新しく出来たゲームセンターの入口付近に置いてあるUFOキャッチャーの前で、ポケットの中に握った百円玉をどうするか考えていた。


 人でにぎわう明るい店内。ゲームセンターの割には見通しもいい。

 常連の中学生と、ちょっと怖い人達しか入っていかないような前からあるゲーセンと違って、子ども連れもいるような安心出来る遊び場になっている。

 そんなわけで普段いかないようなゲーセンにふらっと立ち寄った時、UFOキャッチャーに母さんの好きそうなぬいぐるみを見つけて、こうして今日改めて来てみたわけだ。


  とりあえず一度挑戦してみようとポケットから手を出した時、見慣れた制服が目に入った。うちの学校の女の子だ。人影は、奥の喫煙所の方へ消えていこうとする。

 人の間をわけいってなんとか肩を掴む。

「ちょ、ちょっと待って、」

「何?」

 うちの学校の制服、長い髪、多くを語らない口調。

「その先喫煙所だから!水純みすみさんはまだダメ!」

「入るだけ。・・・誰?」

 クラスメイトのはずの水純真みすみ まことが、まるで知らない人に呼び止められた、とでも言いたそうにこちらを見ている。

「誰って、同じクラスでしょ、日野、日野拓弥ひの たくみだけど…」

「・・・匂いが好きなだけ、だから。」

 一瞬、あ、って顔をした。どうやら見覚えはあってくれたらしい。一安心だ。

 いや、安心している場合じゃないな。喫煙所ってここまで言って入りたい場所か?

「副流煙とかいろいろあるじゃん、匂いもあんま体に良くないって!」

「大丈夫」

 いまだに彼女は喫煙所への一歩を踏み出そうとしている。

 こちらも懲りずに説得を続けようとしたが、「だから」の「だ」も言い終えないうちにその声は届かなくなった。


 さえぎったのは、知らない男の大きな怒鳴り声。

 そして、閃光。熱。鼓膜にぶつかってくる様な爆発音。爆風。

 巻き上げられる瓦礫になったゲーム機と人々の山。跡形もなくなったUFOキャッチャーのぬいぐるみ。


 熱くて痛い。目の前は真っ暗で、走馬燈が駆け巡る暇もないような一瞬の死の感覚。

 ……今思えば、これを感じられていたこと自体がおかしかったのだと思う。




 次の瞬間俺は瓦礫の山の中に立っていた。正確に言えば俺といつ生えたのか分からない、根元から折れ曲がった大きな木と、水純さんが立っていた。

「…は?」

 呆然とする俺の横で動揺もないように見える水純さん。一方俺は本当に混乱しきっているのか、まわりの瓦礫がふわふわと浮いているようにさえ見える。


状況が飲み込めないうちに、俺たちの前に知った顔が駆けてきた。

 「あなた達、どうして…!?」

同じようにという表情でそう発した彼女は、不気味な赤い剣を手にしているが、明らかに俺の知るその人だった。

「会長・・・?」

奇しくも同じ学校の制服が揃ったその場所で、いち早くらしい生徒会長は、

「そう、あなた達・・・」

と呟いた。


そして、俺達は当たり前の日々の終わりを告げられる。





――――――



昨日と同じ今日、今日と同じ明日。このままの日々がずっと続くんだと思っていた。


当たり前のように学校に行き、授業を受け、友人と話し、家に帰る。

そんな生活が薄氷の上に立っていたことを知ったのは、今。


誰かの声と共に目の前で起きた大爆発。

…あなたはなぜか、生きていた。


ダブルクロスThe 3rd Edition 『Demolish an illusion』

ダブルクロス、それは裏切りを意味する言葉―――


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