◆遊園地と温泉と老婆。




 紅茶の家に泊まった帰り道で、呑萄酒葡から電話が来た。





内容は一方的なものだったが、あまりに切実な願いだった事と、私もその内容に興味を持ったので言うとおりにする事にした。





呑萄酒葡からの頼み事を要約すると、調査の助手をしてくれという事。そして助手として調べてきてほしい事があるという事。





紅茶を一人にする訳にはいかないので二人一緒に行って来いと呑萄酒葡は言っていた。


逆に二人でうろうろする事は危険な行為ではないのかと聞くと、かなり距離がある場所らしいので逆に安心だろうとの事だ。





つまり、紅茶と二人で小旅行がてら調べ事をしてこいって事らしい。





私としては紅茶と小旅行なんて素敵な一日の過ごし方が出来るのなら願ったり叶ったりというやつである。





助手として働くからには給料をくれると言うので交通費は全額私が出して、無理矢理連れ出そう。


 確か一日紅茶は特にやる事がないと言っていたので大丈夫だろう。





家に到着すると、手早く着替えて紅茶の手を取り駅へ向かう。





電車で約一時間ほど移動してから新幹線に乗り換えて三十分。なかなかに遠い。


でも遠すぎない日帰りでなんとかなる距離。





絶妙な場所選びだなぁと思いながら呑萄酒葡から送られてきたメールに目を通す。


そこには行くべき場所、調べてほしい事などがいくつか書かれていたが、それをあらかじめ紅茶に教えておくべきか否か。





…やめておこう。


一緒に出かけよう。温泉もある所だよと言ったら紅茶はとても喜んでいたのでその気分に水を差す必要はない。





私としてもとりあえず調査は二の次で、久々の穏やかな時間を満喫しよう。





調べる事さえ調べてくれば有る程度自由に遊んできて構わないと言われているので私は新幹線の中でどのようなルートでどこへ行くかの計画を考える。


スマホでいろいろな施設等を調べながら紅茶にも意見を聞き、大体のプランを立てる。





新幹線が群馬県に入り、ややあって高崎駅に到着する。


私達が住んでいるのは外れの方とは言え都内なので、群馬の空気はとても澄んでいるように感じた。


いつもより少しひんやりしていてここがホームでは無い事を痛感する。





二人できょろきょろしながら改札を出たのだが、紅茶がとにかくいろんな物に興味を持ってしまって大変だった。


特に駅に設置してあった巨大な達磨が気に入ったらしくパシャパシャと写真を撮っては可愛い可愛いとはしゃぐ。


お前の方がよっぽど可愛いっての。





今日一日のために私は家からありったけのお金を持ってきた。


何せここからは電車が通っていない。


移動するならバスかタクシーしかないのだが、バスでのろのろ移動していたら今日一日しかない有意義な時間のほとんどが移動に費やされてしまう。


それではあまりにも味気ないので全部タクシー移動する覚悟でやってきた。





私の手持ちはすっからかんになってしまうだろうが、それでも呑萄酒葡からもらえる報酬の額を考えれば問題ない筈だ。





そもそも探偵業を営んでいるのだからこの移動は捜査に必要な経費として落とせる筈。


だから実際呑萄酒葡が支払う金額というのは思ったほどではないのかもしれない。





細かい計算はきっと後で私が事務員代わりにやる事になるだろうからレシートなど領収書は一通りとっておこう。





高崎駅の東口を出ると思ったよりも開発が進んでいるようで、駅前にはかなり大きな家電量販店があり、駅前にも平日の割には人がいた。


何より、駅前のロータリーが車で埋め尽くされていたのには驚いた。


ここから先がバスかタクシー移動になるということは、ここらは車社会なのだろう。


この近辺に住んでいたら車がないとどこにもいけないかもしれない。





…と、高崎分析をしていても仕方ないのでタクシーを捕まえて行き先を告げる。





「え、こっから渋川まで行ったら結構かかっちゃうけど大丈夫?」





 タクシーの運転手がご丁寧に金額の心配をしてくれる。


いや、どちらかというとこいつら本当に払えるんだろうか?という心配の方が強かったのかもしれない。





「大丈夫です。お金は結構持ってきてますから」





 そう告げると、「そんならいいんだけど」と言って車を走らせ始めた。





車中で紅茶といろいろ話そうと思っていたのだが十分もしないうちに隣で寝息を立て始めた。





…。。





予定がさっそく崩れてしまって悲しい思いをしたのだが、紅茶の寝顔を見ていたらそんな事どうでも良くなってしまった。





じーっと紅茶の顔を見ていたら自分で思っている以上に時間が経過していたらしく、気がついたら目的地に到着していた。





やけに早いなと思ったら途中高速道路を使用していたらしい。


金額は大体一万円くらいだった。





「ふぁー良く寝たっ♪さーて遊ぶぞーっ♪」





 タクシーから降りるなりテンション爆上げで走り回る紅茶。


あまり元気良く走り回ってスカートがひらひら揺らめき、めくれてしまいそうで心配だ。





到着した場所は渋川スカイランドパークと言う名前の遊園地。


都内にある遊園地や某夢の国などと比べると規模はかなり小さいが、私は紅茶といれば大抵どこでも楽しめるので問題ない。


そして紅茶当人が非常に楽しんでいるので大丈夫そうだ。





紅茶が特に気に入っていたのが、敷地の隅の方に有る下り坂を一番下まで下ったところにあるゴーカートで、最初は二人で一台に乗ったのだが紅茶のあばれっぷりに私は目が回りそうだった。





とにかく出来る限りアクセルはベタ踏みで、ハンドルは思い切りよく回す。


遠心力にやられて若干三半規管がくらっとしつつコースを終える。


が、紅茶が「今度は一人ずつのって競争だーっ!!」と言ってもう一度列に並んでしまったのでしぶしぶついていく。





個人的には一回でお腹いっぱいだったし一緒に乗れないのなら魅力半減な訳で、もう一度やる事にあまり積極的にはなれなかった。





紅茶は、勝負するぞーと息巻いて私を先に並ばせる。彼女いわくハンデなのだそうだ。





私を紅茶が必死に追いかけてくる。


そのシチュエーションにはこう、なんというかくるものがある。





ちょっとだけ乗り気になってひとりカートに乗り込み発進。


前の発車からある程度間隔を開けて次のカートが出発する筈なのだが、私のビビリな安全すぎる運転のせいか後ろから唸りをあげて紅茶が迫ってきた。





コースの周りに安全の為に設置してあるタイヤにぼごんぼごん当たりながらスピードを一切緩める事なく突っ込んでくる。





とはいえ、追い抜きをかけられるようなコースでないので、ここからは「追いつかれちゃったー」的な緩い展開を想像していたのだが、彼女はどうやらそれじゃ満足しなかったようで、急カーブのところで無理矢理スピードを上げて突っ込んできたかと思うと私の車体に体当たりしながら無理矢理追い抜いていった。





紅茶がそんな無茶な事をするとは思わなかったので本気で驚いたし、私の乗っていたカートが軽く浮いてしまい冷や汗が出た。





その瞬間、目の前が真っ暗になる。





一瞬何が起きたのかわからなかった。





地面に何かキラキラ光る物が沢山見えたと思ったら私の車体がコントロールを失い、次のカーブを曲がれずにタイヤの壁に突っ込んでしまったらしい。





後ろで変な音がしたからか紅茶が慌ててカート降り、コースを逆走してきたが、もともと安全すぎ運転だったのでさほどスピードが乗っておらず一瞬視界がブラックアウトした程度で済んでいた。





「…さすがに今のは危ないんじゃないか…?」





 まだバクバク言ってる心臓を無理矢理押さえ込んで出来る限り冷静に紅茶に注意をする。





「ご、ごめーん…私テンション上がりすぎてちょっと訳わかんなくなっちゃって…私もちょっと何が起きたか解ってないんだよね」





 自分でやった事くらいは責任持ってくれないと困る。


まさかテンション上がり過ぎて私の顔面にドロップキックしたわけでもないだろうに。





コースのど真ん中で何かトラブルがあったのを見つけたスタッフが慌てて駆け寄ってきて、私と紅茶をコースの脇まで連れて行く。





取り残されたカートを撤去するためにしばらくカート乗り場が完全停止してしまったのは他の客に申し訳ないが、私達も私達でそれなりにお叱りをうけたのでご容赦頂きたい。





少々トラブルもあったがすぐに気を取り直した紅茶と一緒に一通りアトラクションを遊び、次の目的地に移動する事にした。





本来はもっとゆっくり時間をとって遊びたかったのだが、なにせこちらにはあまり時間がないのだ。


そして次の目的地は伊香保温泉。


入浴だけできる宿もあるようなので、こちらもゆっくりはできないが二人で温泉に浸かり、風呂上りにコーヒー牛乳を飲み干すくらいはできた。





「やっぱりコーヒーは甘い方が美味しいね♪」





 紅茶はそう言うが、私としてはコーヒー牛乳と銘打っている以上これはコーヒー牛乳であり、コーヒーでは無い。


大抵成分表を見たらコーヒーより先に牛乳と書いてあるのだから乳飲料だと思っている。





別にさほど拘りもないし美味いものは美味いのでどうでもいいのだけれど。








「さーて。いっぱい遊んで温泉でリフレッシュもできたし次は緑茶のお仕事を手伝っちゃうからね♪」





「…そうだな。そろそろやる事やっておかないと呑萄酒葡に請求できなくなって私が火の車だよ」





「ひのくるまってなに?燃えるの?かちかち山?」


「何の話だ…?」


「だからタヌキのやつ」


「ここは群馬だからタヌキだったらどっちかというと分福茶釜だよ」


「ぶんぶく?タヌキだよ?ぽんぽこじゃないの?」


「分福茶釜っていう話の元になってる神社が群馬に…って、そんな事はどうでもいいよ」


「えーぽんぽこ茶屋気になる」





 なんで分福茶釜がぽんぽこ茶屋になるんだ。 萌える。





しかしこれ以上紅茶に寺の話なんてしていても仕方がないので適当に話を切り上げてまたタクシーに乗り込む。





紅茶はしばらく茶釜の件が気になったらしくぽんぽこぽんぽこ言っていたが、道の途中にあった食堂に目が行ったらしくぽんぽこはどこかへ消えうせた。





「あっ、あの食堂テレビで見たことある!!モツ煮おいしいとこ!!食べたい!!」





 紅茶の一言でタクシーの運転手が気を使って慌てて停車してくれた。


確かに遊園地でフランクフルトを食べたくらいしかお腹に物を入れていないのでそろそろちゃんとしたものを食べたいところだ。


時刻は十五時だというのにかなりお客さんがきていたが、かなり回転率の早いお店らしくどんどん入れ替わりで列が進んでいく。





五分ほど並び中に通され、二人と、何故か一緒についてきたタクシー運転手の三人でモツ煮定食をたいらげる。





紅茶はかなり気に入ったらしく、お土産用のパウチになっているのを買って帰ろうとしていたが、要冷蔵だったため断念し悔しがっていた。





「でも通販とかもやってるみたいだから本当に食べたくなったらおとりよせすればいいよ」





「そっか!そーいうのもあるね♪じゃあいいや次いこ次!」





 残念ながらその次ってのはそんなに楽しい用事じゃないんだよなぁ。





ゆっくり食事をとっていたタクシードライバーが私達より少し遅れて車内に戻り、


「僕もご飯食べてたのでこの間のメーターは止まってますんで安心して下さいな」


 と言うが、エンジン切ってた時点でメーターも何もない気がする。


とにかくずっと車中で待機されてたらその間も加算されていたわけで、そういう意味では少しドライバーに感謝。





そして再び移動する事四十分あまり。


とある村が目的地だったのだが、ドライバーの話によると少し前に区画整理があって村ではなく町になったのだとか。


どうでもいいのだけれどこんな森と山しかないような場所が高崎市内扱いになっているというのを聞いて驚いた。





とりあえず目的地まで到着し、ドライバーにお礼を言って降りると、呑萄酒葡からのメールに添付されてきた地図を頼りに民家を探す。





それぞれ家はかなり広い敷地を持っており、その大体が敷地を無駄にしていた。


家自体は都内では考えられないくらい大きい家がほとんどなのだが、庭が広すぎるのか特に手入れもされておらずただ雑草が生い茂っている所がほとんどだ。





紅茶と地図を眺めながら少し迷いつつとある民家へ辿り着き、チャイムを鳴らそうとするが見つからない。


どうやらこの家にはそういう物はついてないらしい。





仕方ないので軽くドアを叩き、すいませーんと声をかける。





が、まったく反応がない。


外出中なのだろうか?


今日しか時間がないので少し困った事になったなと思っていたら、随分遅れて中から老婆の声がする。





「はいはいどちらさんかのう」





「突然すいません。私芥川縁といいます。少し伺いたい事があるんですが…」





「はいー?なにかのう??」





 …う、私の苦手なタイプのご老人が出てきてしまった。





人柄は非常によさそうなのだが、困った事に耳が遠いらしい。そして私は声を張り上げるのが苦手だ。





「こんにちわ!ちょっと聞きたい事あるんですけど!!」





「あーはいはい。こんなところに若い衆が来るのも珍しいんでびっくらこいたわぁ。どうぞあがってお茶でも飲んでき」





 こういう時普段から声の大きい紅茶は頼りになる。





 私達は老婆の家にあがらせてもらったのだが、どうやらここに一人で住んでいるらしい。


一人で暮らすにはあきらかに広すぎる。


二階建てで、おそらく部屋は六部屋以上あるだろう。





出してもらった熱いお茶を啜っていると、老婆が聞いてもいない家の状況を教えてくれた。


どうやら旦那さんはもう亡くなっていて、息子は仕事で他県に出たっきり帰ってこないのだそうだ。


それでも年に一度は帰ってきてくれるし周りの人々とも仲良くやってるから寂しくはないんだよと少し寂しそうな目で語っていた。





一人が寂しくない訳がない。


私は祖父や祖母はいないし両親が離婚して母はどこにいるのかもわからず父は海外で仕事をしているため帰ってこないので二階建ての一軒家に一人暮らしをしているが、とてつもなく寂しい。


一人で居る方が気楽だと紅茶には強がっているが、本当に寂しいものなのだ。





…と、そんな事はどうでもよかった。


聞かなきゃならない事を聞いていかないと。





「あの、このあたりに以前佐藤さんって人は住んでいませんでしたか?」





 老婆はお茶を入れに行った際補聴器をつけてきてくれたらしく今度は私の声もきちんと届いたようだ。





「佐藤…あぁ、もう十五年くらい前になるかねぇ…確かにこの家より坂を少し登ったあたりに佐藤って家族は住んでたよ。でも…あまりその話はしたくないねぇ」





「…ねぇ、緑茶。それって…」


「…うん。ここはね、紅茶。君が暮らしていた村だよ」





「…緑茶が私の事紅茶って呼ぶって事は…マジな話なんだね」





 そんな事で真偽を計らないでほしいのだが、図星なのでしかたない。





「もしかしてあんた佐藤さんちの娘さんかい…?」





 紅茶という名前に聞き覚えがあったのか老婆の目がくわっと開く。


老婆は震える手でゆっくりお茶を一すすりしてから、「…何が、聞きたいんじゃ…」と迷うように呟いた。





正直紅茶の前でこの話をしなきゃならないのは心苦しいし、紅茶がどういう反応をするのかわからないが、彼女は昔の記憶が一切ないので記憶を取り戻すきっかけにもなるかもしれない。





…それが思い出すべき過去かどうかは別問題だが。


私としては思い出してほしくないと思っているし、この老婆もあまり詳細まで語らずに私達を追い返してほしいとさえ思っている。





しかし、目の前の老婆は、紅茶本人が聞きに来たんだから話さない訳にはいかないと言ってぽつりぽつり話し始めた。


ただし、この話題自体村では禁句なのだと前置きをしてから。








「いやーびっくりしたね」


「やっぱりショックだったかい?」





「んー?何が?全然ショックじゃないよ?だって昔住んでた場所にこれたわけだし昔の私を知ってるおばあちゃんとも話ができたしね♪」





 …なんか変だ。





「私が住んでた家まだあるのかなぁ?ちょっと見ていきたい気もするけど」








 …老婆は話の中でこう言っていた。





 もう、佐藤さんちは取り壊されて今は更地だと。


勿論紅茶も隣にいた。





「今はもう無いってお婆さんが言ってたろ?」





「え?そうだっけー?いつ?聞き逃しちゃったかなぁ?」





 紅茶は心底不思議そうにそう言った。





…これは、おかしい。


変だ。





もしかして





紅茶は…





「あ、やっぱりちょっと気になるから見てきていい?ちょっとだけ!この坂の上だよね?緑茶はここで待ってて!」





 そういうと紅茶は急な坂道を走って登っていった。


老婆の話によると、この坂を登って折り返した先にあったらしい。


私が今立っている場所は高い石垣で囲まれているので、もしかしたらちょうどこの真上あたりにあったのかもしれない。





一人残され、考えを整理する。





老婆の話を紅茶はあまり覚えていない。





しかも、どうにも紅茶にとって都合の悪い部分だけが欠落している。





必ずしもそうだとは言えないが、そうとしか思えない。





それは何故だろう?


紅茶がとんでもないアホなのは私だって解っているが、さっき聞いた話を聞いてもいないように語るのは不自然さ極まっている。





もしかしたら、彼女は無意識に自分の記憶に蓋をしてしまっているんじゃないだろうか?





昔ここで起きた嫌な記憶を忘れてしまったように。





今聞いた昔の話も





蓋をして





閉じ込めて





無かった事にしてしまったんじゃないだろうか。





そこまで考えた所で携帯の着信音が鳴る。





ポケットからスマホを取り出し、画面を見ると呑萄酒葡からだ。





何か急用だろうか?


私は電話に出ようとして、手を滑らしスマホを落としてしまう。





「…何やってんだ私は。ちょっと動揺しすぎ。冷静になれ冷静に」





 独り言を呟きながら一歩前に出てスマホを拾おうとしたその瞬間、今まで私が立っていた場所に





ずどん





人の頭より少し大きいくらいの岩が。





石垣の上から落ちてきていた。





「おいおい嘘だろ…」





 もし私がスマホを落としていなければ。





もし私が一歩前に出ていなければ。





…こりゃ死んでたぞ…。





恐怖で鈍くなった頭をなんとか奮い立たせ石垣の上を見る。





勿論誰もいない。





これを落とした犯人が呑気にまだこちらを見ている訳がない。





ほどなくして、上から慌てた紅茶の声がした。





「ちょっと緑茶大丈夫!?今、変な人居た!!」





 まて、思考が追いつかない。





あの時私を殺そうとしてた奴がここまでつけて来たのか?


私が一人になるタイミングを見計らって殺すために?





私があいつの顔を見たとでも思ってるのか?





いや、そんな事より





「紅茶!!早くこっちに戻ってこい!一人は危ない!!私もそっち向かうから合流しよう!!」





「わかったー!!」





 走り出そうとした私に、背後から声をかける者が居た。





「お前ら…遊ぶなら先に仕事してからにしろよな。お前のスマホに仕込んだGPSで居場所は筒抜けだったんだぞ?」





 呑萄酒葡。





何故こんな所に?





いや、そんな事今はどうでもいい。





「そんな事より紅茶が危ない!一緒に来て!犯人がこの辺に居るかもしれない!!」





「なっ、それを早く言えそれをっ!!」





 私達が坂を登りきる前に、目の前から猛ダッシュで紅茶が駆け下りてきて、私達に気付いたのは数メートル先まで来たところで、スピードを殺しきれずに私に突っ込んで二人して坂の下の方までごろごろと転がる。





 結構痛い。





「いっ…てて…紅茶、無事か…?」


「だ、だいじょう…ぶ」





 そう言いながら紅茶は意識を失った。



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