無味綿飴
私の名は、カイ
ふわふわとしたものがある
口に含む
口の中でシュッと消える
面白い
一度に食べてしまうのは勿体ない
あの空に浮かべてしまおう
いくつも空へと放る
途中、地面が言った
やめてくれよ、そんなことされたら
凍え死んでしまうよ
なに、構うものか、投げろ、投げろ
ふわふわしたものが空に近づくにつれ
風に空気に力に押され平たくなったり
潰れたり、散らばったりする
ふわふわしたものもまた
やめてください。痛い、痛いという
構うものか、ええい、投げろ
投げろ、なげろ、投げろ、なげろ
空をふわふわのものが覆うと
辺りは少し暗くなった
もう少し暗くなった
もっと暗くなった
途端にふわふわしたものが泣いた
私を涙が叩いた、そしてそのまま私を伝って
地面の上に落ちていった
空がいつも通りの真っ青に戻った頃
私はその虚しい空を見上げ
とても情けなく、哀しくなってしまった
泣くしかなくなった
たくさん泣いた
ごめんなさい、地面さん
ごめんなさい、ふわふわさん
ごめんなさい、ごめんなさい
水たまりが出来てもなお泣いた
水たまりがどんどん大きくなって行く
そして、やがて私は涙に包まれた
そして、溺れてたくさん水を飲んだ
涙の味はしょっぱかった
私の名前は、海
透明な涙の底で眠る
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