第18話 燻製と露天風呂

その1 燻製用の魚捕り

 そんな訳で翌日。

 小坂井ウサウサ先輩と摩耶先輩は畑仕事。

 亜理寿さん、真理枝さん、イライザ先輩、アンドレア先輩、美智流先輩に僕の六人で魚捕りだ。


「深川さんや川原さん、寺原さんあたりがいれば楽なんですけれどね」

 この三人なら川を見るだけで魚がどれくらいいるかなんてのがわかる。


「でもまあ魚も増えていますし大丈夫でしょう」

「深川先輩の投網も借りましたし、これを三人くらいで広げて追い込めば」

 そんな訳で全員で川に入る。

 まずは僕とアンドレア先輩とイライザ先輩が下流で網を張る役。

 亜理寿さんと真理枝さんに美智流先輩が追い立て役だ。


「結構この網こんがらがりそうですね」

「そうだな。ただそれだけに魚がひっかかればいいのだが」

 結構遠くから追い立て役が追い立て始める。


「確かに魚が増えてきた感じだな。時々当たる」

「当たるけれど網にはなかなかうまく入らないな」

「この網そのものには魚を引っかける機能は無いですしね」

 つまり網をすぼめないとこっちの網で魚を捕らえることは出来ない。

「つまり捕らえるのは向こうのたも網任せでこっちは立っているだけか」

「壁役ですね、つまり」


 ただ魚も生死がかかっているだけに素早い。

 亜理寿さんは慣れているのかそこそこ捕まえている感じだ。

 ただ他の二人は慣れていない感じで単に追い回しているだけに見える。

「うーん、参加したいが壁役は動けないからな」

「その辺は三人に頑張って貰うしか無いですね」


 そしてついに、あまり捕れない事にしびれを切らしたのか美智流先輩が宣言する。

「ちょっと大技を使います。皆さん意識をしっかり保っていて下さい」

 何をする気だ。

 でもイライザ先輩にだけは通じたらしい。

「程々の強さにしてくれよ。こっちが耐えられない」

「心得ています。では」


 びりっ!

 電気ショックにも似た衝撃が身体を走る。

 何だ今のは。

「軽く威圧を当てました」


 魚が浮いてきた。

 大小いろいろ一網打尽という感じだ。

「これって死んでいるの?」

「気絶しているだけです。今のうちに大きいのから早く」

 そんな訳で大きめの魚から三人が網で拾いまくる。

 捕ると言うより拾うという感じだ。

 大型中型を拾いまくったところで残りの魚も気絶から回復したらしい。

 浮いていたのが一気に見えなくなった。


「これで燻製お試し用には充分でしょう」

「冷やして仮死状態にしておきます」

 亜理寿さんがバケツを持ってそう宣言する。


「しかし……今のは漁法としてありなのか?」

 アンドレアさんが素朴な疑問。

 確かに爆破漁法とかバッテリー漁法とか毒流しとかに近い方法だよな。


「何か言いましたか」

「……いえ別に」

 美智流先輩の笑顔がちょっと怖い。

 まあ魚が捕れたからいいとするか。

 前向きに考えよう。


 そんな訳で皆で家へと向かう。

 なおどうせ身体が冷えるだろうという事で露天風呂はあらかじめ準備済みだ。

 建築クラブの男性の皆さんが帰る前にこの皆さんを風呂へ押し込みたい。

 何せみなさん服がずぶ濡れ。

 下着類も丸見え状態だし服が水でくっついて体型丸見えだから。

 役得とか思わないでくれ。

 こういった事に慣れてしまうのもまた悲しいものだ。

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